クガイソウ(英語表記)Veronicastrum sibiricum(L.)Pennell ssp.japonicum(Nakai)Yamazaki

改訂新版 世界大百科事典 「クガイソウ」の意味・わかりやすい解説

クガイソウ
Veronicastrum sibiricum(L.)Pennell ssp.japonicum(Nakai)Yamazaki

本州に分布し,山地草原林縁に生えるゴマノハグサ科多年草。茎は株立ちとなり,直立して高さ0.8~1.3m,4~8枚の輪生する葉を5~9段につける。夏,茎頂に穂様の総状花序に多数の淡紫色の花をつける。花冠は筒形で,先は4裂してややとがる。蒴果(さくか)は卵形で,半球形の多数の小さな種子がある。西南日本には花序が無毛のナンゴククガイソウV.sibiricum(L.)Pennell var.australe Yamazakiが,また北海道には全体が大きく,花は無柄で花冠裂片の先が丸いエゾクガイソウV.sachalinense(Boriss.)Yamazakiがある。クガイソウは切花として利用されたり,ロックガーデンに植えられる。

 クガイソウ属Veronicastrumは,花序が頂生するクガイソウ類と,腋生(えきせい)するスズカケソウ類とがある。スズカケソウV.villosulum(Miq.)Yamazakiは茎が斜上し,その先は下垂して地について新苗を作る。全体に密にビロード状の毛がある。葉のわきごとに球形の花序をつける形が,山伏篠懸(すずかけ)を思わせる。濃紫色の花が美しく,まれに栽培されるが,めったに見られない珍しい植物である。中京地方に自生する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「クガイソウ」の意味・わかりやすい解説

クガイソウ
くがいそう / 九蓋草
[学] Veronicastrum sibiricum (L.) Penn. subsp. japonicum (Nakai) Yamaz.

ゴマノハグサ科(APG分類:オオバコ科)の多年草。茎は株立ちして直立し、高さ約1メートル、葉は4~8枚が輪生する。7~8月、茎頂に長い総状花序を出し、多数の小花が密生する。花冠は青紫色で筒状、先は4裂し雄しべ2本は花外に長く突き出る。蒴果(さくか)は卵形で、中に多数の円い小さな種子を含む。北海道、本州、四国、九州の山地から亜高山帯草地に多くみられる。四国と九州のものは変種とされる。名は、花茎に9節ほどの輪生葉がつくことによる。民間では根茎を煎(せん)じて利尿剤とする。クガイソウ属にはこのほかにスズカケソウの仲間があり、約20種がおもに東アジアに分布する。近縁のルリトラノオ属とは、花冠が筒状であること、蒴果や種子の形などから区別される。

[久保多恵子 2021年8月20日]


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百科事典マイペディア 「クガイソウ」の意味・わかりやすい解説

クガイソウ

本州〜九州,東アジアの山地の草原や林縁にはえるゴマノハグサ科の多年草。高さ60〜100cm,葉は3〜6個ずつ輪生。夏,茎の頂に花穂を出し紅紫色の花を密につける。花冠は7〜8mmの筒状で,先は4裂。おしべは2個で長く突き出る。輪生する葉が何段にもつくので,九蓋草九階草の名がある。

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