クオリティ・ペーパー
quality paper
エリート階層を読者とする質の高い新聞。日本語では〈高級紙〉。広く大衆に読まれる娯楽的な大衆紙と対比的に用いられる。国際,政治,経済など公共的ニュースの比重が高く,社会的影響力は大きいが,比較的発行部数は少ない。多くの国で,少部数の高級紙と大部数の大衆紙という両極分解の構造がみられる。階層分化の進んだ社会構造を背景として,イギリスで生まれた呼称で,《タイムズ》《ガーディアン》(以上イギリス),《ニューヨーク・タイムズ》(アメリカ),《ノイエ・チュリヒャー・ツァイトゥング》(スイス),《ル・モンド》(フランス)などが代表例である。日本では,社会的流動性が高く,中間階層の幅が厚い社会構造により,顕著な両極分化が生ぜず,《朝日》《毎日》《読売》などのような,高級紙に値する質と,大衆新聞的な巨大な発行部数を両立させた新聞が発展した。
執筆者:広瀬 英彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内のクオリティペーパーの言及
【イギリス】より
…【水野 国利】
[マス・コミュニケーション]
イギリスは,量・質ともにマス・メディア先進国であり,たとえば通信社[ロイター]は,大英帝国の伝統を保持して,現在も世界各地に巨大なネットワークをはりめぐらせている。日本との対比で特色をあげれば,まず第1に新聞が歴史的な階層構造を反映して,《[タイムズ]》《[ガーディアン]》などの〈高級紙([クオリティ・ペーパー])〉と,政治経済などの堅い話題,難しい議論にはできるだけ触れず,犯罪,スポーツ,性など娯楽的情報に力点をおく,《[サン]》《デーリー・ミラー》などの〈大衆紙popular paper∥mass paper〉とに截然と分かれていた点である。だが1970年代からは《[デーリー・メール]》,《デーリー・エキスプレス》の2紙がその中間を志向する中級紙として再出発し,現在は3層構造となっている。…
【投書】より
…幅広い階層の人々がさまざまな問題について自己の所見を投書し,マス・メディア側でも積極的に掲載する。とくに[クオリティ・ペーパー](高級紙)の投書欄は,その国の各界指導者層の討論の場で,議会制民主主義を補完する機能をもっている。また新聞社,出版社側でも,投書を〈編集者への手紙〉と呼んでおり,投書欄の充実に努めるとともに,投書を通じて得た意見を参考にして紙面の改良に努めている。…
※「クオリティペーパー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」