クオリア(読み)くおりあ(英語表記)qualia

翻訳|qualia

デジタル大辞泉 「クオリア」の意味・読み・例文・類語

クオリア(qualia)

感覚的・主観的な経験にもとづく独特の質感。「秋空の青くすがすがしい感じ」「フルート音色のような高く澄んだ感じ」など。感覚質

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クオリア」の意味・わかりやすい解説

クオリア
くおりあ
qualia

たとえば晴れた秋空の「青く清々しい感じ」のような、特定の感覚的経験に伴う独特の質感を表す概念脳科学は心のはたらきを脳の生み出す作用と考えてきたが、脳内の神経ネットワークはあまりに複雑であり、電気回路を理解するように、完全に機械的には理解することができない。すなわち「感覚的経験は神経興奮の特定の電気的パターンに還元できる」といった素朴な考え方では、脳と心の問題に太刀打ちすることはできないのである。「クオリア」とは、この困難な問題に新しい視点からアプローチするものであり、いわば心という主観的な経験の世界と、分子レベルの精密なメカニズムとの仲立ちをする概念であるといえよう。こうした着想が脳科学を超えて興味深いのは、従来哲学人文科学が扱ってきた感覚の主観的な質という問題に、自然科学が挑戦し始めたことである。このことは、近代科学の素朴な還元主義的態度に変更を迫ると同時に、これまで「心の問題は科学では解けない」と断定してきた人文科学にも、深い反省を促すものである。「クオリア」とは哲学と脳科学との接点となる概念であり、従来の西洋哲学で「心身問題」として追及されてきた難問に、新たな角度から挑戦するものである。

吉岡 洋]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android