クアラ・ルンプール(読み)くあらるんぷーる(英語表記)Kuala Lumpur

翻訳|Kuala Lumpur

日本大百科全書(ニッポニカ) 「クアラ・ルンプール」の意味・わかりやすい解説

クアラ・ルンプール
くあらるんぷーる
Kuala Lumpur

マレーシアの首都。行政上は州と別格の連邦区である。マレー半島西海岸地方の中央部に位置し、クラン川の河口から約40キロメートル上流、背後山地低地との接点に位置する。人口129万7526(2000)。年平均気温27.1℃、年降水量2499ミリメートル。

 この地方は19世紀中ごろまではジャングルに覆われていたが、1850年代末、付近の錫(すず)鉱発見とともに中国人が入植し、クラン川とゴンバック川の合流点に小さな集落をつくった。これがクアラ・ルンプールの起源で、地名の意味は「泥んこの川」である。錫鉱採掘の発展に伴って市街はしだいに整い、19世紀末にはセランゴール州州都となり、河口のクラン港とは鉄道で結ばれた。また周辺ではゴム園も開かれその取引も盛んになった。第二次世界大戦前の人口は10万ほどであったが、戦後独立したマレーシアの首都となってからの発展は目覚ましいものがある。

 クアラ・ルンプールは、その発展過程で東南アジア特有の複合社会の特質をよく示している。マレー人の国の首都であるが人口の過半数は中国系であり、さらにインド人、ヨーロッパ人そのほか各国人の居住割合も高い。これらは市内でもそれぞれ歴史的に居住地区を異にし、宗教、言語、文化、職業などの差異も著しい。一般に官僚軍人、警察官などはマレー系が占めるのに対し、商業、工業および専門職従事者は圧倒的に中国系が多く、交通、運輸関係従事者はインド人が多い。この差異は同時に生活水準や経済力の差異ともなって、いっそう民族的な対立を引き起こしている。1969年のマレー、中国両民族の衝突事件はその一例であった。

 市内には、国会議事堂元首宮殿(イスタナ・ネガラ)、国立博物館、大モスク、独立記念スタジアム、マレーシア大学、バトゥー・ケーブ(鍾乳洞(しょうにゅうどう))などがあり、熱帯樹の緑とともに美しい都市を形づくっている。ハイウェーが市街を貫き、南西23キロメートルにスパン空港があり、1998年にはクアラ・ルンプール国際空港が開港した。また1997年には、当時としては世界一高いビルであったペトロナス・ツイン・タワー(452メートル)が完成している。なお、連邦政府の大半の機能を市内から近郊のプトラジャヤに移転する計画が進んでいる。

[別技篤彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android