ギンリョウソウ(読み)ぎんりょうそう

改訂新版 世界大百科事典 「ギンリョウソウ」の意味・わかりやすい解説

ギンリョウソウ (銀竜草)
Monotropastrum humile(D.Don)Hara

林中のやや暗い,湿り気のある所に生えるイチヤクソウ科の腐生植物。葉緑体を欠き,全体が白くろうそくのように見える。和名は下向きの花を竜の頭に見立ててつけられた。また,薄暗い林中に生える様子から,ユウレイタケ幽霊茸)ともいう。高さ8~20cm。葉は互生し,白色で鱗片状。春から夏にかけて,1個の白色の筒形の花が下向きにつく。萼片は全縁。おしべは6~10本。花柱の先は薄紫色を帯びる。子房は1室。果実は白色,液質で裂けない。千島サハリン,日本,朝鮮,中国,ヒマラヤに分布する。

 ギンリョウソウモドキMonotropa uniflora L.(英名Indian pipe)はギンリョウソウに似るが,晩夏から秋に開花し,萼片の縁は不規則に裂け,子房は3~5室,果実は上向きにつく蒴果(さくか)なので区別される。東アジア,北アメリカの温帯に広く分布し,アキノギンリョウソウの名もある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ギンリョウソウ」の意味・わかりやすい解説

ギンリョウソウ
ぎんりょうそう / 銀竜草
[学] Monotropastrum humile (D.Don) Hara

イチヤクソウ科(APG分類:ツツジ科)の多年生の腐生植物。別名ユウレイタケ、マルミノギンリョウソウ。全体が純白色であるが、桃色を帯びるものもあり、乾くと黒くなる。茎は高さ5~20センチメートル、太く直立し、多数の鱗片葉(りんぺんよう)が上向きにつく。4~7月、茎頂に白い花が1個下向きに開き、包葉に包まれる。花柱は先が開出し、柱頭暗紫色に染まる。丘陵帯から亜高山帯腐植土の多い林床に生え、日本全土、樺太(からふと)(サハリン)、南千島、朝鮮、中国、ヒマラヤに分布する。名は、花が銀白色で下向きに開く姿を竜に見立てたもので、ユウレイタケの名は、葉緑素がないのでキノコを連想し、暗い林内に頂が垂れて開く草姿から白衣をまとった幽霊に見立てたものである。ギンリョウソウ属は、子房は1室で側膜胎座、果実は液果である。アジアに4種が分布する。

[高橋秀男 2021年4月16日]


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百科事典マイペディア 「ギンリョウソウ」の意味・わかりやすい解説

ギンリョウソウ

ユウレイタケとも。日本全土,東アジアの山中の樹林下にはえるイチヤクソウ科の多年生腐生植物。根は褐色で,やや塊状。根以外は純白色で,茎は直立し,高さ10cm内外,肉質となる。葉は退化し鱗状。5〜7月,白い筒状鐘形の花が,茎頂に1個下向きに咲く。果実は球形で白色。
→関連項目寄生植物

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