ギプス包帯(読み)ギプスほうたい(英語表記)plaster bandage

精選版 日本国語大辞典 「ギプス包帯」の意味・読み・例文・類語

ギプス‐ほうたい ‥ハウタイ【ギプス包帯】

〘名〙 =ギプス
魔風恋風(1903)〈小杉天外〉前「ギプス繃帯とやら、是は療(なほ)る迄この儘に置く物とのこと」

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デジタル大辞泉 「ギプス包帯」の意味・読み・例文・類語

ギプス‐ほうたい〔‐ハウタイ〕【ギプス包帯】

骨折関節病気などの際、患部固定のために用いる、包帯石膏で固めたもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ギプス包帯」の意味・わかりやすい解説

ギプス包帯
ぎぷすほうたい
plaster bandage

骨折などで患部を固定するために広く用いられている代表的な硬化包帯で、整形外科では日常なくてはならない包帯である。

 ギプス包帯は、ギプス末(石膏末(せっこうまつ))が、水を加えることによって固形化する性質を利用したものである。ギプス末は2分の1分子の結晶水をもった硫酸カルシウムで、水を加えると2分子の結晶水をもった含水硫酸カルシウムとなり、固形化して硬化する。このものは107~130℃に熱することで、また2分の1分子の結晶水をもった硫酸カルシウムとなり、粉末化する。次の式はこれらの反応を示す。

 CaSO4・1/2H2O+3/2H2OCaSO4・2H2O
 ギプス包帯は、このようなギプス末を、目の粗い糊(のり)付きガーゼを適当な幅にしたガーゼ包帯に均等にまぶして巻軸帯(かんじくたい)としたものである。ギプス巻軸帯には普通2裂(15センチメートル幅)と3裂(10センチメートル幅)がある。実際に使用するときは、微温湯の中に浸して水分が完全に浸潤するのを待ち、ついでギプス末が流れ出ないように注意しながら湯の中から取り出し、軽く絞って速やかに用いる。その用法は、この湯に浸したギプス包帯を、普通の巻軸帯を巻くようにして身体に巻き付けるわけであるが、適当な厚さになるまで巻いていきながら、よくさすって包帯と包帯が密着するようにする。ギプス包帯はだんだんと硬化してくる。最近は湯でなく水でもよいもの、また硬化の速いものもあるが、それがかならずしも使いよいとは限らない。硬化後、十分に乾燥させれば硬い包帯となる。なお、ギプス包帯を巻くときは、普通その下敷きとして綿包帯などを巻くが、これを有褥(ゆうじょく)ギプス包帯という。これに対して特別の場合、下敷きなしでギプス包帯を直接皮膚の上に巻くことがあり、これを無褥ギプス包帯という。

[永井 隆]

用途

ギプス包帯はどのような形にも巻くことができ、硬化が速くて固定力も強く、優れた硬化包帯であるので、四肢体幹の固定などあらゆる場合の固定に用いられる。体幹固定のギプス包帯は、ギプスコルセットとよばれる。

 また硬化包帯として身体に巻くほか、ギプスベッドやギプス副子(ふくし)として用いられる。ギプスベッドは、脊椎(せきつい)骨の疾患仰臥(ぎょうが)安静(あおむけに寝たままでいる)が必要な場合に用いられるカメの甲らのようなものである。ギプス副子は、四肢の骨折などを一時的に固定するために用いられるギプス包帯でつくった副子で、ほかの金網製や金属板製などの副子に比べて身体によく適合するようにつくれるので、広く用いられる。

 さらにギプス包帯は、コルセットや四肢の整形外科的装具の作製になくてはならないものであり、身体のモデルをつくるための採型(さいけい)(型どり)に用いられている。

[永井 隆]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ギプス包帯」の意味・わかりやすい解説

ギプス包帯
ギプスほうたい
cast; plaster bandage

硫酸石灰の 0.5水塩 (焼石膏) の粉末を付着させた包帯。これは水を加えるとすぐに硬化して,二水塩となる。この性質を利用したギプス包帯は,使用法が簡便ですぐれているため,整形外科の領域で古くから用いられている。適用範囲は,骨折や脱臼整復後の固定,変形の矯正,整形外科的装具,装具作製時の陰性モデルなどきわめて広い。

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世界大百科事典(旧版)内のギプス包帯の言及

【ギプス】より

…この場合,加える水の温度が高いほど硬化は速い。 普通はガーゼ包帯の間にギプス粉末を挟みギプス包帯として用いる。布にギプス粉を特殊加工して固着させたものもある。…

【包帯】より

…通常は,さらし木綿を種々の幅に裂いて巻いた巻軸帯を指すが,布片を四角いまま使用する四角巾や対角線で切った三角巾も包帯の一種である。また,接着剤のついた絆創膏包帯やギプス粉のついたギプス包帯は,固定に用いられる。関節や頭部などの被覆固定しにくい部分では,伸縮性のない巻軸帯を用いるに当たって,種々の巻き方が考案されている。…

※「ギプス包帯」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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