日本大百科全書(ニッポニカ) 「ギス」の意味・わかりやすい解説
ギス
ぎす / 義須
deepsea bonefish
[学] Pterothrissus gissu
硬骨魚綱ソトイワシ目ギス科に属する海水魚。北海道の釧路(くしろ)以南の太平洋沿岸および瀬棚(せたな)地域以南の日本海沿岸、東シナ海、九州・パラオ海嶺(かいれい)に分布する。体は細長い円筒状で、やや側扁(そくへん)する。体高は背びれ始部付近でもっとも高く、尾柄(びへい)部で著しく低い。目に脂瞼(しけん)がない。口は吻(ふん)の腹面に開き、小さく、その後端は目の前縁下に達しない。上下両顎(りょうがく)には微細な歯があり、絨毛(じゅうもう)状の歯帯を形成する。下顎の腹面に喉板(こうばん)がない。体は円鱗(えんりん)で覆われるが、頭部は多孔(たこう)性で鱗(うろこ)がない。背びれの基底が長く、体の後部のおよそ3分の2にわたっている。臀(しり)びれの基底はきわめて短く、背びれ後端のすこし前から始まる。腹びれは体の中央部にあり、その基底には大形の三角形の鱗がある。肛門(こうもん)は体の後方にあり、臀びれの直前に開口する。体は背側面が暗灰色で、腹側面は銀白色。頭部は黒っぽい。尾びれの上下端は黒色。水深200メートル以深の岩礁域に生息する。産卵期は晩冬から初春で、1~3月ごろにいろいろな発育段階のレプトセファルス(葉形(ようけい)幼生)がとれる。約1年後に変態が終わり、体が縮小して底生生活に移行する。最大体長は60センチメートルほどになる。底引網、深海延縄(はえなわ)などで漁獲され、練り製品の原料になる。本種は口が小さく、喉板がないか、小さくて退化的であることでソトイワシ科とともにソトイワシ目に属し、口が大きく、喉板がよく発達したカライワシ目と異なる。また、本種は背びれの基底が著しく長いことで、ソトイワシ科のソトイワシとは容易に区別できる。
[浅野博利・尼岡邦夫 2019年2月18日]