キランソウ(読み)きらんそう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キランソウ」の意味・わかりやすい解説

キランソウ
きらんそう
[学] Ajuga decumbens Thunb.

シソ科(APG分類:シソ科)の多年草で、丘陵や山麓(さんろく)に多くみられる。茎は四方に出て地表をはい、長さ5~15センチメートルになるが、節から根を出すことがない。葉は長楕円(ちょうだえん)形で、くさび形に基部が細くなり、長さ1.5~3センチメートル。茎、葉とも全体に縮れ毛が多い。根出葉が四方に広がって地表を覆う(ロゼット状)ので、別名ジゴクノカマノフタともいう。花は3~5月ごろ葉腋(ようえき)に数個ずつつき、濃紫色で1センチメートルくらいの筒があり、下唇は大きく、3裂して開出し、上唇はごく短い。本州、四国、九州、朝鮮半島、中国に分布する。キランソウ属は約50種あり、アジア、アフリカ、ヨーロッパに分布し、日本にはジュウニヒトエ、ニシキゴロモなど12種がある。

村田 源 2021年8月20日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キランソウ」の意味・わかりやすい解説

キランソウ
Ajuga decumbens

シソ科の多年草。別名ジゴクノカマノフタ。路傍土手などによくみられる。茎は数本が地面をはって広がり,立上がらない。茎,葉ともに毛が密生する。葉は対生し,倒披針形,鈍頭で縁にあらい不整の鋸歯をもっていて,しばしば全体が紫色になる。花は春に咲き,葉腋に輪生する。鮮紫色の唇形花冠,上唇は2裂して小さく,下唇は3裂して大きい。おしべは4本で2本は長く,めしべ1本がある。

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百科事典マイペディア 「キランソウ」の意味・わかりやすい解説

キランソウ

本州〜九州,東アジアの路傍や野原にはえるシソ科の多年草。全草に縮れた毛が多く,茎は地表をはう。葉は対生し,倒披針形で先はまるい。春,葉腋に濃青紫色で長さ1cmほどの唇形(しんけい)花をつける。上唇は小さいが,下唇は大きくて3裂,中央片が大きい。ジゴクノカマノフタの別名がある。近年,ヨーロッパ原産のセイヨウキランソウがカバープラントなどによく利用される。

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世界大百科事典 第2版 「キランソウ」の意味・わかりやすい解説

キランソウ【Ajuga decumbens Thunb.】

山野道端に生えるシソ科の多年草(イラスト)。地面にへばりついて生育するので,ジゴクノカマノフタの名もある。根出葉はロゼット状となって数枚あり,長さ4~6cm,幅1~2cm,長楕円形で波状の鋸歯があり,先は鈍頭。茎は四方に広がって地をはい,長さ5~15cm,多細胞のちぢれた毛があり,数対の葉をつけて,多くは紫色を帯びる。3~5月頃,葉腋(ようえき)に数個ずつ花をつける。花は紫色で長さ約8mmの筒があり,上側は小さく2裂してごく短く,下側は3裂して開出し,中央裂片は最も大きく,濃色の条がある。

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