キューバとアメリカの国交正常化交渉(読み)きゅーばとあめりかのこっこうせいじょうかこうしょう

知恵蔵 の解説

キューバとアメリカの国交正常化交渉

半世紀以上も断絶が続いていたキューバとアメリカの国交回復に向けた交渉。約1年半にわたる水面下での交渉を経て、2015年1月、キューバの首都ハバナで両国代表による初めての協議が行われた。前年から渡航送金などの規制は緩和されており、キューバの人権問題の改善、米国の対キューバ禁輸措置の解除が最大の焦点になった。しかし体制が異なる両国の隔たりは大きく、互いの主張を確認し合うに止まった。とりわけ経済封鎖解除には、共和党が多数を占める米国議会の強い反発が予想されている。米国が早期実現を目指す大使館の設置についても、次回以降の課題となったが、テロ・震災・疫病対策等の協力関係を強化することでは一致をみている。なお、交渉の仲介役を務めたのはローマ法王フランシスコで、14年3月米オバマ大統領がバチカンを訪問した際、キューバとの関係改善を促したという。
キューバの独立は1902年のこと。米西戦争でアメリカが勝利を収め、キューバはスペインの植民地支配から開放された。しかし、介入したアメリカの事実上の保護国となり、米軍の介入やグアンタナモ基地の保有継続などを認めることとなった。59年、真の独立を求めるフィデル・カストロが親米のバチスタ政権を倒し(キューバ革命)、外国人や米企業の資産を接収国有化していった。これに反発したアメリカは砂糖輸入禁止等で対抗し、2年後の61年、両国は断絶状態となった。以後カストロ政権ソ連の支援を受け、社会主義による国家運営を進めてきた。しかし91年のソ連崩壊によって経済は低迷。2008年に兄の後を継いだラウル・カストロ議長は現実路線に転じ、市場原理の導入、民間部門の活性化などを図っているが、国民を苦しめている食料・エネルギー・物資の不足は解消できていない。

(大迫秀樹 フリー編集者/2015年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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