日本大百科全書(ニッポニカ) 「キュリー‐ワイスの法則」の意味・わかりやすい解説
キュリー‐ワイスの法則
きゅりーわいすのほうそく
強磁性体の磁化率χのキュリー温度Tc以上における法則で、χ=c/(T-Θ)という形をしている。ここでcはキュリー‐ワイス定数とよばれる定数、Tは温度、Θは常磁性(漸近的)キュリー温度とよばれ、通常Tcよりすこし高い。この法則はP・E・ワイスによって最初に理論的に導かれたもので(1907、ワイスの分子場理論)、先にP・キュリーによって測定されたTc以上の磁化率の温度変化をよく説明できたので、キュリー‐ワイスの法則とよばれる。キュリー定数はc=NgJ2μB2J(J+1)/3kで与えられ、Tc以上における常磁性状態の磁気モーメントの大きさ
を推定するのに重要な物理量である。前式でNは単位体積中の磁性原子の数、gJはランデのg因子、Jは角運動量、μBはボーア磁子、kはボルツマン定数である。反強磁性体の磁化率も秩序温度以上でキュリー‐ワイスの法則に従うことが知られており、このときΘは負の値となる。
精密な測定では、磁化率はキュリー温度近傍では前記の法則からずれて、χ=c/(T-Tc)γという形の法則に従うことがわかっている。ここでγは臨界指数とよばれ、鉄、ニッケルなどの通常の強磁性体では1.33という値をとる。このようにキュリー温度近傍で磁化率の温度変化がキュリー‐ワイスの法則から外れるのは、ワイスの理論で無視されている短距離秩序ができるためである。
また金属強磁性体の場合、キュリー定数からかならずしも磁気モーメントが正しく求められるとは限らないことにも注意する必要がある。
[石川義和・石原純夫]