キャロル(英語表記)Lewis Carroll

精選版 日本国語大辞典 「キャロル」の意味・読み・例文・類語

キャロル

(Lewis Carroll ルイス━) イギリスの童話作家数学者チャールズ=ドジソンの筆名。「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」など、超現実的な作風の幻想的な童話で知られる。(一八三二‐九八

キャロル

〘名〙 (carol)⸨カロル⸩ 宗教的な斉唱、合唱歌曲の一つ。一五世紀前半のイギリスに始まる。クリスマスなどでうたわれる。

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デジタル大辞泉 「キャロル」の意味・読み・例文・類語

キャロル(Lewis Carroll)

[1832~1898]英国の童話作家・数学者。「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」など、ユーモラスで幻想的な童話で知られる。

キャロル(carol)

キリスト教会で、主としてクリスマスの季節に歌われる民謡調の祝いの歌。クリスマスキャロル。カロル。

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改訂新版 世界大百科事典 「キャロル」の意味・わかりやすい解説

キャロル
Lewis Carroll
生没年:1832-98

イギリスの童話作家。本名はドジソンCharles Lutwidge Dodgson。チェシャー地方の牧師の家に11人兄弟姉妹の第3子,長男として生まれた。有名なパブリック・スクール,ラグビー校に入学したが,男子全寮制の校風が肌に合わず,休暇に帰郷して,自作のノンセンス詩や漫画を載せた手書きの家族回覧雑誌を発行するのを楽しみにしていた。オックスフォード大学クライストチャーチ学寮に進み,卒業とともに数学講師となり,その独身の生涯のほとんどをここで過ごすことになる。本業のかたわら,本名のつづり字を並べかえて作った筆名ルイス・キャロルのもとに戯作を寄稿。また写真に熱中して,有名人や少女たちの肖像を数多く撮り,写真史上に足跡を残した。1862年,学寮長リデル博士の3人娘をピクニックに連れ出し,その途中,次女アリスを主人公にした物語を即興で語って聞かせたが,これが《不思議の国のアリス》(1865)の原型となった。姉妹編《鏡の国のアリス》(1871)が出版されたころは,すでにリデル家との関係が悪化し,アリスともほとんど会うことがなかった。もう一つの代表作スナーク狩り》(1876)は新しい少女友だちにささげられている。三つの傑作から,さまざまななぞなぞ,言葉遊び,論理ゲームにいたるまで,キャロルの想像力はつねに触媒として子ども(少女)を必要としていた。子どもと話すときだけどもらなかったといわれる彼は,おそらく子どもを相手にしたときにのみ,19世紀市民社会の道徳的・心理的抑圧を逃れて,善悪の彼岸に遊ぶことができたのであろう。その遊びは,言語や論理についての常識をくつがえし,夢や無意識を復権するに足る力を秘めていた。キャロルのノンセンスが後にシュルレアリストや精神分析家や言語哲学者たちを魅了するのは,そのためである。晩年の長編小説シルビアとブルーノ》(1889,完結編は1893)はノンセンス性が失われた分だけ失敗作となっている。
アリス物語
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キャロル」の意味・わかりやすい解説

キャロル
Carroll, Lewis

[生]1832.1.27. チェシャー,ダーズベリー
[没]1898.1.14. サリー,ギルフォード
イギリスの童話作家,数学者。本名 Charles Lutwidge Dodgson。オックスフォード大学に学び,1855~81年,母校の数学講師をつとめ,十数冊の数学書を著わす。筆名で発表した『ふしぎの国のアリス』 Alice's Adventures in Wonderland (1865) および『鏡の国のアリス』 Through the Looking-Glass and What Alice Found There (72) は,いずれも少女アリスの奇想天外な冒険を綴った空想物語で,児童文学の傑作として世界中で愛読されている。ほかにノンセンス詩『スナーク狩り』 The Hunting of the Snark (76) ,小説『シルビーとブルーノー』 Sylvie and Bruno (2巻,89,93) および詩集などがある。それらの物語や詩は児童文学の枠をこえて,現代のシュルレアリスムや不条理文学の先駆に数えられ,ノンセンス文学の典型ともいえる。キャロルは聖職者の資格を得ながら,内気な性格と吃音のために説教壇には立たず,写真を趣味に子供を愛しながら一生独身を守った。ビクトリア朝の代表的奇人である。

キャロル
Carroll, James

[生]1854.6.5. イギリス,ウーリッチ
[没]1907.9.16. アメリカ,ワシントンD.C.
アメリカ陸軍の軍医。 1897~1902年,W.リードらとともにハバナのアメリカ陸軍黄熱委員会の委員として,黄熱の原因の探究に参加。自分自身の人体実験で,黄熱は一種のカ Aedes aegyptiによって人体に感染することを証明し,その病原体がウイルスであることを実証した。

キャロル
Carrol, Paul Vincent

[生]1900.7.10. ブラックロック
[没]1968.10.20. グラスゴー近郊
アイルランドの劇作家。偏狭なカトリシズムと自由主義的思想の葛藤を扱った作品が多い。代表作『影と本質』 Shadow and Substance (1937) 。

キャロル
carol

おもにクリスマスに歌われる単純な斉唱,合唱の宗教的祝歌。教会の儀式のための音楽に比べて民衆的な親しみやすい性格が特徴。 14~16世紀のイギリスで発展。

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百科事典マイペディア 「キャロル」の意味・わかりやすい解説

キャロル

英国の作家。本名はCharles Lutwidge Dodgson。チェシャー地方の牧師の家の生れ。オックスフォード大学の数学の講師を本職とし著作も多いが,筆名で発表した《不思議の国のアリス》(1865年)と《鏡の国のアリス》(1871年)の姉妹編によって有名。ほかに《スナーク狩り》(1876年),《シルビーとブルーノ》(1889年)など。ノンセンスと言葉遊び,論理ゲームをたくみに用いて想像力を刺激するキャロル作品は,のちのシュルレアリスムの詩人や精神分析家らだけでなく,子どもから大人まで世界中の読者を魅了している。有名人や少女の肖像写真を多く残し,アマチュア写真家の草分けとしても知られる。

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デジタル大辞泉プラス 「キャロル」の解説

キャロル

マツダが1962年から販売している軽自動車。5ドアハッチバックを中心とする。1998年以降、スズキのアルトのOEM車になった。

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世界大百科事典(旧版)内のキャロルの言及

【キリスト教音楽】より

…しかし,フランスの詩人・音楽家マショーによるポリフォニックな通作ミサ曲(ミサ通常文を一貫して多声部の楽曲に作出したもの。ミサ曲)をはじめとする諸作品があり,また俗語を歌詞とする宗教的な歌曲ラウダlauda(イタリア)やキャロルcarol(イギリス)なども隆盛に向かった。 15~16世紀は,ルネサンスの古典対位法の作曲技法の完成によって,ミサ曲やモテットなどの合唱ポリフォニーの作品が,比類のない芸術的な高みに達した時代である。…

【クリスマス】より

…とくに,クリスマスが子どもを中心とする家族の祭りとなったことがこの時代の特徴である。クリスマス・ツリーサンタ・クロースクリスマス・カードが導入され,クリスマス・キャロルが復活し,クリスマス・プレゼントやクリスマス正餐(ディナー)が庶民の家庭に進出した。今日のクリスマスはこのときから始まった。…

【クリスマス・キャロル】より

…クリスマスの時期に歌われる宗教的な民謡を総称する。ただし,キャロルは英語の呼び方で,フランスではノエルnoël,ドイツではクリスマスのリートWeihnachtslied,スペインではビリャンシーコvillancicoと呼ばれる。どの国の場合も,親しみやすく明るい調子の曲が多い。…

【舞曲】より

…キリスト教権の強かった中世では,舞踏は異教的なもの,非宗教的なものとして,その音楽も記譜されることがなかったからである。しかし,トルバドゥールたちの出現とともに,一定の形式をもつ輪舞形態のエスタンピーやキャロルが誕生し,歌われたり楽器で奏されたりし始めた。やがて舞踏が宮廷生活に不可欠なものとなると,舞曲も目ざましい発展を遂げる。…

【アクロスティック】より

…古代の巫女の予言がこの手法によるなぞ掛けになっていたともいわれるが,近代では,献詩に用いたりすることが多い。《鏡の国のアリス》末尾の詩にアリス・リデルの名を読みこんだキャロルはその名手であった。行末の字でさらに仕掛けたものを〈ダブル・アクロスティック〉という。…

【アリス物語】より

…イギリスのルイス・キャロルが書いた《不思議の国のアリスAlice’s Adventures in Wonderland》(1865)と《鏡の国のアリスThrough the Looking‐Glass》(1871)の2編の童話。前者では,白ウサギのあとを追ってウサギ穴に落ちた少女アリスが,地下の国で,身長の伸び縮みや,涙の池や,気違いティー・パーティなど,多くの冒険を味わい,気違い帽子屋やチェシャー猫など,かずかずの人物・動物に会う。…

【言語遊戯】より

…ルネサンスおよびそれに続くマニエリスムの時代には,シェークスピアやラブレーを頂点として,言語遊戯は黄金期を迎えた。合理主義・写実主義を奉ずる近代文学は言語遊戯を排したが,そのさなかの19世紀中葉のイギリスに,L.キャロルが子ども向けノンセンスの装いのもとに言語遊戯の天才を発揮し,〈マザーグース〉などに連綿と存続していた伝統を復活した。20世紀に入ると,ダダやシュルレアリスムが日常的言語の破壊を敢行し,現代文学の極点ともいうべきJ.ジョイスの《フィネガンズ・ウェークFinnegans Wake》(1939)にいたって,文学は巨大で神話的な言語遊戯そのものと化した感がある。…

【児童文学】より

…しかし18世紀を支配したJ.J.ルソーの教育説はたくさんの心酔者を出して,児童文学は型にはまり,C.ラムは姉メアリーとともにこの風潮に反抗して,《シェークスピア物語》(1807)などを書いたが,児童文学が自由な固有の世界となるには,ペローやグリム,アンデルセンの翻訳をまたなければならなかった。しばしば子どもたちの実態を小説に描いたC.ディケンズは《クリスマス・キャロル》を1843年にあらわし,E.リアは滑稽な5行詩による感覚的なノンセンスの楽しみを《ノンセンスの本》(1846)にまとめた。 空想の国へ子どもをさそうファンタジーは,C.キングズリーの《水の子》(1863)を経て,L.キャロルの《不思議の国のアリス(アリス物語)》(1865)でみごとな花をさかせた。…

【写真】より

…ナダールもパリのスタジオを訪れる名士たちのすぐれた肖像を撮っていたが,彼はほかにも気球の上から空中写真を撮るなどさまざまな撮影を試みた才人であった。また同じころに《不思議の国のアリス》の作者L.キャロルは少女たちの愛すべき写真の数々を残している。 このように肖像というものは当時の写真の主要な表現主題であったが,大衆の要求に応えた大量の肖像写真は,社会史的に見れば,人々が写真そのものと親しみを深める役を果たし,絵画とは違う写真の特性についての知識の普及に役立った。…

【ノンセンス】より

…童謡の富を吸収して,19世紀中葉にノンセンス文学のジャンルを確立したのは2人のイギリス人であった。リメリックと呼ばれる詩型の戯詩に漫画をつけて《ノンセンスの絵本》(1846)を出版したE.リア,および専門の論理学を遊戯的に応用してノンセンスの可能性を十二分に展開した《不思議の国のアリス》(1865),《鏡の国のアリス》(1871)の著者L.キャロルである。ドイツに奇才モルゲンシュテルンが現れたのも19世紀後半だった。…

【笑い】より

…風刺やパロディが社会批判の役割をもった攻撃性の強い笑いだとすれば,こちらは比喩や言葉遊びに基づいて〈おかしみ〉を楽しむ要素がより強い。その種の愉快な伝承歌謡〈マザーグース〉をもつイギリスは,E.リアの《ノンセンスの絵本》(1846)やL.キャロルの《不思議の国のアリス》(1865。アリス物語)といった代表作を生み出した。…

※「キャロル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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