キバシリ(読み)きばしり(英語表記)tree creeper

翻訳|tree creeper

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キバシリ」の意味・わかりやすい解説

キバシリ

(1) Certhia familiaris; Eurasian treecreeper スズメ目キバシリ科全長 13cm。胸から腹が白く,ほかの部位は淡い灰褐色昆虫食で,食物をとりながら樹幹を螺旋状に巻いてゆっくり登り,あるところまでくると下方に飛び移って,また同じように登りながら獲物をとる。おもに針葉樹林にすみ,ヨーロッパから東アジアにかけて帯状に広く分布する。日本では北海道本州四国地方で繁殖しているが,数はそれほど多くない。
(2) Certhiidae; treecreepers スズメ目キバシリ科の鳥の総称。全長十数cm。2属 11種からなり,ユーラシア大陸,アフリカ北アメリカ中央アメリカに分布する。どの種も互いに似ていて,体はほっそりし,羽毛は柔らかく,尾羽は長めで羽軸はやや硬い。は細長く,下側に湾曲している。森林にすみ,尾羽を支えに鋭い爪で樹幹や枝上にしがみつき,ゆっくり動き回って樹皮の間や木の裂け目にひそんでいる昆虫類やクモ類を捕食する。

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改訂新版 世界大百科事典 「キバシリ」の意味・わかりやすい解説

キバシリ (木走)
treecreeper
Certhia familiaris

スズメ目キバシリ科の鳥。全長約14cm,キツツキ類に似たかっこうをして幹にとまり,キツツキ同様尾の羽軸も堅い。だが,くちばしは細くて湾曲しており,あしゆびは,ふつうの小鳥と同じく,前に3本,後に1本ある。体上面は焦茶と白のまだら模様,下面は白い。アジア,ヨーロッパ,北アメリカのそれぞれおもに中緯度地方に広く分布しており,日本では北海道,本州,四国のおもに亜高山帯に生息している。針葉樹林にすみ,幹を下から上へとらせん状に登りながら,樹皮表面や割れ目にいる昆虫やクモをくわえとって食べる。1年を通じて単独またはつがいで暮らしており,群れになることはない。ツリリリという細い声で鳴くが,目だつ声ではないので気をつけないと聞き落としてしまう。さえずりはチチーツルリ,チーチーツルリリリと聞こえる。外敵が近づくと幹にぴったりとくっついてしまい,じっとしている。こうすると,羽色が幹の色の中にとけこんでしまい姿が見つけにくくなる。枯損木の割れ目にできたくぼみなどに巣をつくり,4~5個の卵を産みこむ。抱卵は雌だけ,あるいは雄も手伝って行い,育雛(いくすう)は雌雄ともに行う。キバシリ科には5種が含まれ,いずれも全長十数cmで,褐色の羽色をしている。アジア,ヨーロッパ,アフリカ北部,北アメリカに分布している。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「キバシリ」の意味・わかりやすい解説

キバシリ
きばしり / 木走
tree creeper

広義には鳥綱スズメ目キバシリ科に属する鳥の総称で、狭義にはそのうちの1種をさす。種としてのキバシリCerthia familiarisは全長14センチメートルの小形の鳥。明るい褐色で腹面は白く、背面には小白斑(はくはん)がある。嘴(くちばし)は細く鋭くとがり、いくらか下方へ湾曲している。尾羽の先はとがり、羽軸はとくに硬い。足の指が比較的大きく、つめがよく発達している。ユーラシアと北アメリカに広く分布し、針葉樹林、落葉広葉樹林にすむ。日本では四国以北の各地に留鳥としているが、冬は若干山麓(さんろく)へ移動するものもある。樹木の幹や大枝の下方に止まり、硬い尾羽を支えとして上方へよじ登り、樹皮の割れ目や地衣類、コケ類のすきまにいる虫を探す。1羽かつがいで生活しており、冬はよく他種との混群に入っている。繁殖期になると強い縄張り性を示し、樹洞や割れ目、キツツキの古巣などに巣をつくる。キバシリ科Certhiidaeはユーラシアと北アメリカに分布し6種が知られていて、どれもよく似た形をしている。近縁のホシキバシリSalpornis spilonotusはアフリカ、インドにおり別科にしたほうがよいとされる。

[中村登流]

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百科事典マイペディア 「キバシリ」の意味・わかりやすい解説

キバシリ

キバシリ科の鳥。翼長約6cm。上面は褐色地に白斑が並び,下面は白色。ユーラシア大陸および北米大陸に分布。日本では留鳥として北海道,本州,四国の山地の針葉樹林などにすむ。木の幹に縦にとまり,らせん状に登りながら昆虫などをあさる。巣は木の割れ目などに作られる。

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