キノー(英語表記)Philippe Quinault

改訂新版 世界大百科事典 「キノー」の意味・わかりやすい解説

キノー
Philippe Quinault
生没年:1635-88

フランス劇作家。1658年に悲喜劇《いつわりのアルシビアド》で登場し,コルネイユの英雄悲劇にかわる恋愛悲劇の流行に乗じ,65年の《アストラート》で大成功を博した。ただしボアローが批判するように,ロマネスクな作風は古典劇の理想とは遠い。同年その喜劇代表作《浮気な母親あるいは恋人騒動》を書く。《ポーザニアス》(1688)や《ベレロフォン》(1671)の哀傷的な悲劇を書く一方,オペラの台本作家として活躍。72年にリュリが王立音楽アカデミーを創設すると,その専属作者となる。エウリピデスの悲劇《アルケスティス》をオペラ化した《アルセスト》(1674)は,両者優劣文壇論議を呼び,ラシーヌも介入する新旧論争の一争点となった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キノー」の意味・わかりやすい解説

キノー
Quinault, Philippe

[生]1635.6.4. パリ
[没]1688.11.26. パリ
フランスの詩人,劇作家。幼い頃から詩人トリスタン・レルミットの召使となり,また法律も学ぶが演劇に興味をもち,第1作で早くも好評を博した。喜劇,悲劇などの作品を数多く発表したが,いずれも平凡の域を出ず,モリエールにすすめられ抒情悲劇の創作に転向する。 1673年以後作曲家リュリと組み,オペラ『アルセスト』 Alceste (1674) ,『プロゼルピナ』 Proserpina (80) ,傑作といわれる『アルミッド』 Armide (86) を世に出した。悲劇作家としては凡庸であったが,大がかりな舞台装置,機械仕掛け,ダンスを使用したオペラの真の創始者として名をとどめている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「キノー」の意味・わかりやすい解説

キノー
きのー
Philippe Quinault
(1635―1688)

フランスの劇詩人。初めロマネスクな悲喜劇、悲劇を気どった文体で書いて好評を博した。悲劇『アストラート王』、喜劇『浮気な母親』(ともに1665)はとくに成功を収めたが、やがてオペラに転じ、作曲家リュリに数々の脚本を提供しフランス・オペラに一つの型をつくった。オペラ台本の代表作に『アルセスト』(1674)、『アルミード』(1685)などがある。

[伊藤 洋]

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