キチン

精選版 日本国語大辞典 「キチン」の意味・読み・例文・類語

キチン

〘名〙 (chitine chitin) 昆虫や甲殻類皮膚軟体動物の外殻などの主要な成分をなす、窒素を含む多糖類。精製すると白色の粉末として得られる。酸、アルカリに溶けにくく、蛋白質と組み合ってクチクラを形成する。

キチン

〘名〙 ⇒キッチン

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デジタル大辞泉 「キチン」の意味・読み・例文・類語

キチン(chitin)

節足動物の表皮、軟体動物の殻、菌類の細胞壁などを形成する、窒素を含む多糖類。水や弱酸には不溶、強酸に溶ける。

キチン(kitchen)

キッチン

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化学辞典 第2版 「キチン」の解説

キチン
キチン
chitin

β-1,4-poly-N-acetyl-D-glucosamine.キチンは節足動物,環形動物,軟体動物にキチン-タンパク質複合体として多く分布し,腔腸動物や線虫類にも見いだされ,それらの骨格構造の形成に関与している.とくに節足動物では,蛛(ちゅう)形類,甲殻類,昆虫類などのほとんどすべてに存在する.その表皮は,キチン25~50%(乾燥質量として)とタンパク質,炭酸カルシウムとからなる.通常,カニあるいはエビの甲羅を粉末とし,希塩酸で炭酸カルシウムを除き,アルカリ濃溶液で短時間処理してタンパク質,そのほかのきょう雑物を除いて,水洗してつくる.白色の無定形物質.平均重合度850.-14→+56°(濃塩酸,加水分解で変化).水,希アルカリに不溶.濃アルカリと加熱すると脱N-アセチルと分解が起こり,キトサンになる.濃厚無機酸,無水ギ酸などにつけておくと可溶化し,その際,部分分解する.キチナーゼで分解し,N-アセチルグルコサミンを生成する.LD50 50 mg/kg(ラット,静脈).[CAS 1398-61-4]

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「キチン」の意味・わかりやすい解説

キチン
きちん
chitin

自然界ではセルロースに次いで多量に分布する多糖で、アミノ糖(糖のアミノ誘導体)からなり、N-アセチル-D-グルコサミンがβ(ベータ)-1・4結合で重合したもの。白色の粉末で水に溶けず、きわめて反応性に乏しく、セルロースよりも安定である。強アルカリによって遊離アミノ基をもつ塩基性多糖キトサンchitosanを生じ、これはさらに濃塩酸によってグルコサミンに分解される。1823年にカブトムシの鞘翅(しょうし)から初めて単離され、「よろい」を意味するギリシア語キトンchitonにちなんで名づけられた。キチンを大量に得るには、エビやカニの殻を塩酸に浸し、炭酸カルシウムを溶出後、アルカリとともに煮沸してタンパク質を取り除き、残った沈殿物をよく洗ってから乾燥すればよい。キチンは節足動物の硬い表皮や殻の骨格を形づくるばかりでなく、カビの細胞壁の重要な構成要素にもなっている。また、環形動物、軟体動物、円形動物、腔腸(こうちょう)動物にも存在するが、原腸体腔幹に属する棘皮(きょくひ)動物や脊椎(せきつい)動物にはまったく存在しない。これは進化論的に興味深いことである。なお、地球上におけるキチンの存在量は驚くほど多く、甲殻類の一群であるアミ類オキアミ類などの動物だけでも、1年間に数千億トンのキチンを生産している。キチンを分解する酵素キチナーゼは、カビ、細菌、軟体動物などの下等動物にみいだされている。

[村松 喬]

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改訂新版 世界大百科事典 「キチン」の意味・わかりやすい解説

キチン
chitin

昆虫や軟体動物の外殻中に存在する多糖類。N-アセチルグルコサミンがβ-1,4結合した構造をもち,ウリジン二リン酸-N-アセチルグルコサミンがキチン合成酵素によって重合したもの。キチンは安定な物質であるが,強酸,強アルカリにより分解される。カタツムリの胃液中のキチナーゼという消化酵素によっても分解される。細菌の細胞壁の骨格物質であるペプチドグリカンは,キチンに類似した構造をもつ。
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百科事典マイペディア 「キチン」の意味・わかりやすい解説

キチン

無脊椎動物,特に節足動物のかたい表皮や殻の骨格中に存在し,また菌類・細菌類の細胞壁の重要な構成要素ともなるアミノ糖の一種。N-アセチル-D-グルコサミンの重合体。ふつうタンパク質などと結合し,さらにポリフェノールが結合したり,カルシウム塩が沈着する。なお,昆虫の外殻などをキチン質ということがあるが,これは化学的にはキチンのみではなく,キノン硬化タンパク質などが含まれる(クチクラ)。
→関連項目細胞壁食物繊維

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漢方薬・生薬・栄養成分がわかる事典 「キチン」の解説

キチン【chitin】

不溶性食物繊維のひとつ。かにやえびなどの甲殻類の殻からたんぱく質カルシウムを取り除いて精製された動物性の食物繊維。かにの甲羅、えびの殻、しゃこの甲羅、乳製品、きのこ類などに多く含まれる。体全体の状態を整え、免疫力を向上させて自然治癒力を高める効果を発揮するほか、細胞の活性化、肝・腎機能の正常化、血圧調整作用、便秘の予防・改善、解毒・排毒作用、血中コレステロール値を下げて動脈硬化の予防、がん抑制作用などに効果があるとされる。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キチン」の意味・わかりやすい解説

キチン
chitin

節足動物の表皮を形成する含窒素多糖類。軟体動物など多くの動物の皮膚や貝殻様硝子膜質形成物としても存在する。水,有機溶媒に不溶。酸およびアルカリに対しても強い抵抗力を示し,体の支持,保護の役割をもつ。

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栄養・生化学辞典 「キチン」の解説

キチン

 アミノ糖からなる多糖の一種.節足動物,環形動物,軟体動物などの支持組織に含まれる.

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世界大百科事典(旧版)内のキチンの言及

【クチクラ】より

…その内部にある原表皮はクチクラの大部分を占め,内・外2層に分かれる。外表皮の内半部と原表皮では,キチンchitin分子のすき間をスクレロチンsclerotinという硬タンパク質が埋めているので,表皮が外骨格と呼ばれるほどの強靱性をもつことになる。これらの層には,内部の真皮細胞層から出た多数の孔管が貫通していて,もし表層が磨滅すれば,その分泌物が孔管を通って表層に移動して修復される。…

【クチクラ】より

…その内部にある原表皮はクチクラの大部分を占め,内・外2層に分かれる。外表皮の内半部と原表皮では,キチンchitin分子のすき間をスクレロチンsclerotinという硬タンパク質が埋めているので,表皮が外骨格と呼ばれるほどの強靱性をもつことになる。これらの層には,内部の真皮細胞層から出た多数の孔管が貫通していて,もし表層が磨滅すれば,その分泌物が孔管を通って表層に移動して修復される。…

【多糖】より

…高等植物の細胞壁多糖はセルロースを主体としている。エビ,カニ,昆虫の殻の主体をなすのはN‐アセチルグルコサミンからなるキチンである。キチンはさらに線形動物,腔腸動物,そしてカビに分布している。…

※「キチン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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