精選版 日本国語大辞典 「キセニア」の意味・読み・例文・類語
キセニア
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翻訳|xenia
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被子植物の種子の胚乳(はいにゅう)の性質に、雄性(花粉)の影響が現れる現象。以前は、メンデルの「遺伝の法則」と異なる現象と考えられたが、被子植物特有の重複受精の機構が明らかとなって、この現象の仕組みも解決された。
トウモロコシのある品種は黄色の胚乳で、他の品種の胚乳は白色をしている。この場合、黄色胚乳種は、白色胚乳種より顕性であり、黄色胚乳種の花粉を白色胚乳種の雌しべに受粉させると、できた種子の胚乳が黄色となる。これは重複受精によって、胚乳組織も胚と同様に受精によって生ずるためである。黄色胚乳系統のトウモロコシの花粉の二つの精核のうち、一つの核は卵核と合体して胚をつくるが、もう一つの核は2極核と合体して胚乳となるので、花粉の顕性の形質が胚乳に現れるのである。胚乳以外の母系統の組織に、雄性の性質が出る場合はメタキセニアという。メタキセニアの例として、ナツメヤシの果実の大きさや熟化の時期が花粉の種類によって左右されることが知られている。
[吉田精一]
もともとは1881年フォックW.O.Fockeが提唱した言葉で,花粉(雄親)の影響で種子や果実など植物体の一部の形質に変化が現れる現象をいったが,現在ではこのうち内胚乳に影響が現れる場合のみをいう。被子植物は重複受精をおこない,花粉からきた2個の雄核のうち,1個は卵核と受精して胚を形成し,他の1個は二つの極核と受精して内胚乳を形成する。この結果,内胚乳には雄親の核が入るので胚乳に雄親の性質が直ちに現れることがある。これがキセニアであるが,内胚乳の表現型に関して,雌親が劣性,雄親が優性の場合にのみ生ずる現象である。一例をあげると,もち性のイネを雌親としてうるち性のイネの花粉を交雑すると,もち性のイネにうるち性の穎果(えいか)をつける。これは内胚乳の貯蔵デンプンの化学的組成をきめるうるち性遺伝子(Wx)がもち性のそれ(wx)に対して優性であるため,2個の極核(おのおのの遺伝子型wx)と1個の雄核(遺伝子型Wx)の受精によって生じた内胚乳(遺伝子型Wxwxwx)に直ちに優性形質のうるち性が発現するためである。なお胚乳以外の組織に雄親の影響が現れる場合はメタキセニアと呼んで区別される。
執筆者:阪本 寧男
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