キシュウミカン(読み)きしゅうみかん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「キシュウミカン」の意味・わかりやすい解説

キシュウミカン
きしゅうみかん / 紀州蜜柑
[学] Citrus kinokuni hort. ex Tanaka

ミカン科(APG分類:ミカン科)の果樹。別名コミカン、キノクニミカン、サクラジマミカン。中国原産で、日本へは鎌倉時代、1280年ころに渡来したといわれる。熊本地方で古くから栽培され、諸地方に伝えられた。紀州(和歌山県)には1574年(天正2)伊藤仙右衛門によって伝えられ、有田郡を中心に広まった。1671年(寛文11)江戸に初出荷され、キシュウミカンの名が普及した。紀伊国屋文左衛門(きのくにやぶんざえもん)時代の蜜柑船は本種を運んだもので、ウンシュウミカンが普及する明治中期までは代表的品種であった。生育は遅いが、長寿のために大木となる。葉は細く小さい。12月に熟し、20~30グラム、果皮は橙黄(とうこう)色。果汁は甘く、香気があり、肉質はよいが種子は多く、1果平均10粒ある。種子のないムカクキシュウ(無核紀州)、果実が大きく扁平(へんぺい)なヒラキシュウ(平紀州)などは変種である。なお今日、一般に紀州ミカンとして売られるのは紀州産ウンシュウミカンの銘柄的呼び名で、本種とは異なる。

[飯塚宗夫 2020年10月16日]


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改訂新版 世界大百科事典 「キシュウミカン」の意味・わかりやすい解説

キシュウミカン (紀州蜜柑)
Citrus kinokuni Hort.ex Tanaka

中国原産の橙色,小果のミカン科常緑広葉樹。日本には室町時代からあり,江戸時代の主要品種。小果だが美味。小蜜柑本蜜柑異名が多い。中国から日本に伝わった年代は不明。紀州には1574年(天正2)に導入された。1634年(寛永11),江戸に初めて出荷され,紀州蜜柑として有名になる。ウンシュウミカン温州蜜柑)が普及するまでは生食用の主要品種であった。現在もわずかに栽培されている。

 葉は細長く小さい。5月中・下旬に開花する。花は白色で,光沢ある五つの花弁をもち小さい。果重は20~60g。果皮は極めて薄い。果肉は橙色で柔軟多汁。種子は5~6粒。単胚性である。本種のほかに,種子のない無核紀州,果実が大きい平紀州(大平蜜柑)などの変種がある。
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栄養・生化学辞典 「キシュウミカン」の解説

キシュウミカン

 [Citrus kinokuni].ムクロジ目ミカン科ミカン属の植物で,果実を食用にする.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のキシュウミカンの言及

【紀伊国】より

…旧国名。紀州。現在の和歌山県の全部と三重県の一部に当たる。
【古代】
 南海道に属する上国(《延喜式》)。本州の最南端,紀伊半島の西南部を占め,北は和泉・河内両国,東は大和・伊勢2国に境を接し,西は海をへだてて淡路・阿波・土佐3国に対し,南は大洋にのぞむ。東西約27里(100km),南北約30里(110km)。三方を海に囲まれ,長い海岸線を有するが,山がちで平地に乏しい。もと木国(きのくに)と表記したが,和銅年間に好字二字をあてて紀伊国と改めた。…

※「キシュウミカン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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