キク(菊)(読み)キク

百科事典マイペディア 「キク(菊)」の意味・わかりやすい解説

キク(菊)【キク】

キク属Chrysanthemumに属する園芸植物で,鉢物,切り花用などとして広く栽培され,多くの園芸品種がある。頭花の大小,舌状花の形や色などさまざまであるが,分類学上は1種類でイエギクといわれる。由来については諸説があるが,中国に自生するチョウセンノギクシマカンギクとの交雑に由来し,奈良時代日本に渡来したという説が有力である。キクの栽培は江戸時代に発達し多くの品種がつくられ,明治以降さらに発展した。イエギクの分類は,普通はまず頭花の大きさにより大菊,中菊,小菊に,さらに舌状花の形質や姿勢により細かく分けられる。大菊は頭花の径20cm内外のもので,厚物,管物,広物に分ける。厚物は舌状花が四方から中心をかかえるように組み合い満開時には半球状に盛り上がるもので,外側の弁の姿により掴(つかみ)咲,抱(かかえ)咲,走り付きなどに分ける。管物は舌状花が管状になり,太さにより太管,間管(まくだ),細管に分ける。広物は舌状花が扁平幅広のもので,一重のものを一文字,三重から四重のものを美濃菊という。中菊は頭花の径10cm内外のもので,舌状花は平弁,管弁,さじ弁(管弁の先が平弁になる)の3種になる。一重で平弁または管弁が車状に平開するものを肥後菊,平弁が中心を囲み立つものを嵯峨(さが)菊,多数の平弁が中心を囲み乱れ咲き,周囲の弁がたれるものを伊勢菊という。小菊は径5cm以下のもので,平弁,管弁,さじ弁が一重から八重になる。特殊のものに魚子(ななこ)咲やアザミ咲などがある。以上は和菊であるが,その一品種である料理ギクは花を食用にするため,東北地方でおもに栽培されている。また中国からヨーロッパに渡り,そこで観賞用として発達したものを洋菊という。 日本に野生するキク属は,20種内外ある。太平洋側の海辺にはえるものが多く,関東以北から北海道にハマギクコハマギク,関東から東海道にイソギク,四国から九州にノジギク,四国にシオギク,九州にサツマギク,本州の日本海側にサンインギクなどがある。本州から四国の低山にはリュウノウギクが多く,本州の亜高山にイワインチンがある。また外来種のシュンギクが野菜として,マーガレットフランスギクシャスタデージーなどが観賞用に栽培されている。かつてはシロバナムシヨケギクジョチュウギク)が薬用として利用された。 なお菊は古来,紋章にも用いられる。皇室の紋章となったのは鎌倉期以後で,1871年(明治4年)に皇族以外での菊花紋使用がはっきり禁止され,天皇家は16花弁八重菊,皇族は14花弁裏菊と定められた。
→関連項目合弁花

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「キク(菊)」の意味・わかりやすい解説

キク(菊)
キク
Chrysanthemum morifolium var. sinense

キク科多年草で,観賞用に昔から広く栽培される。キクという名は一般にキク属のものの総称であるが,植物学上は上記の種をさす。現在栽培されているものはすべてこの種からつくられた品種である。秋に茎の上部で分枝し,頭状花序をつける。普通その周辺部には雌性の舌状花が,また中心には両性の管状花がある。頭状花の大きさ,形,色,また舌状花の占める割合などは品種により多種多様である。栽培ギクの起源については定説がないが,野生種から直接出たのではなく雑種起源と考えられる。また外国でつくられた品種は一般に洋ギクと呼ばれ,ほかに同属の別種としてマーガレット C. frutescensやシャスターデージー C. burbankiiなどがある。

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