日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ガードナー(John Gardner)
がーどなー
John Gardner
(1933―1982)
アメリカの小説家。アイオワ大学大学院で古代・中世英文学を修める。以後各地の大学で教壇に立つかたわら創作を続ける。代表作『陽光との対話』(1972)は、1960年代アメリカの社会的、精神的混乱状況を体現する「陽光の男」と、法と秩序を維持しようとする地方警察署長との精神的出会いを中心として、現代の混迷状況における「愛」の可能性と「徒労」を扱ったもの。ほかに牧歌的な趣向を現代に生かした佳作『ニッケル・マウンテン』(1973)および『王のインディアン』(1974)、『十月の光』(1976)がある。また「ベオウルフ」伝説をもとに、現代の混沌(こんとん)状況にも通ずる暴力の世界を、怪獣の視点より描いた『グレンデル』(1971)など、神話や伝説に素材を借りたものも多い。純粋の学術書として評伝『チョーサーの生涯と時代』(1977)がある。また評論『道徳小説論』で、現代アメリカ作家のニヒリズムへの傾斜を批判した。
[牧野有通]