カール(Robert F. Curl Jr.)(読み)かーる(英語表記)Robert F. Curl Jr.

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

カール(Robert F. Curl Jr.)
かーる
Robert F. Curl Jr.
(1933―2022)

アメリカの化学者。テキサス州アリスに生まれる。ライス大学で化学を専攻し1954年に卒業。カリフォルニア大学バークリー校に進学し1957年博士号を取得。ハーバード大学での研究を経て、1958年ライス大学助教授、1967年から同大学教授。マイクロ波分光法や赤外線分光法を用いてフリーラジカルの反応における動きや電子的な構造などを研究した。

 1985年、R・スモーリー、H・クロートとの共同研究で炭素原子60個からなる新しい化合物を発見する。それまで、炭素の単体としては黒鉛グラファイト)やダイヤモンドなどが知られていたが、それらとは異なる新しい構造で、化学的に非常に安定した性質をもち、しかもかご状の形(六角形と五角形が組み合わさったサッカーボールと同じ形)をしていると予想されたため、これをフラーレンと名づけた。フラーレンはその構造の中に原子を閉じ込めることができたり、超伝導性をもたせることができ、まったく新しい素材として電子工学や医学に応用が期待されている。フラーレン発見の功績に対して、スモーリー、クロートとともに1996年のノーベル化学賞を受賞した。

[馬場錬成 2018年6月19日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android