カーダール(読み)かーだーる(英語表記)Kádár János

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カーダール」の意味・わかりやすい解説

カーダール
かーだーる
Kádár János
(1912―1989)

ハンガリー政治家。精密機械工見習いとなり、1930年労働運動に参加。翌1931年共産主義青年労働者同盟に加盟。1940年の共産党再建に参加し、1942年中央委員となる。党の公然組織「平和党」の中央委員も兼任。ドイツ占領期にチトーとの接触を図って逮捕される。1945年2月に党のモスクワ亡命派中央委員会と国内中央委員会が合同、中央委員となる。以後、国会議員や警視総監補としても活躍。社会党との合同による勤労者党創立後の1948年8月に内相就任。その直後、反チトー・キャンペーンが起こり、反ラーコシ(書記長)派の粛清も始まり、1951年に逮捕される。1954年に名誉回復され、ふたたび党要職につく。1956年秋ハンガリー事件のなかで当初ナジ政府に加わるが、ソ連軍事介入に呼応してナジのもとを離れ、親ソ的革命労農政府を組織し、反抗鎮圧。以後、1988年まで党第一書記。一時は首相を兼任し、「敵でない者は味方」とする柔軟な政策で国情を安定させ、国民の信望を得た。

[家田 修]

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百科事典マイペディア 「カーダール」の意味・わかりやすい解説

カーダール

ハンガリーの政治家。1930年代初めから非合法の共産党活動を行い,第2次大戦中はチトー協力抵抗運動を組織する。1947年党副書記長,1948年内相となる。1951年チトー主義者として投獄されたが1956年非スターリン化政策で復帰し,ハンガリー事件後首相(1956年―1958年,1961年―1965年)。社会主義労働者党第一書記(1956年―1988年)。→スターリン批判
→関連項目ハンガリーハンガリー社会主義労働者党

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改訂新版 世界大百科事典 「カーダール」の意味・わかりやすい解説

カーダール
Kádár János
生没年:1912-89

ハンガリーの政治家。機械工出身。1931年共産党入党。第2次大戦中はブダペストを中心に反ファシズム民族解放運動を組織。解放後共産党中央委員。48年から内相。51年にラーコシにより逮捕されるが,54年に復権。56年7月ハンガリー勤労者党中央委員。56年10月のナジ政権に当初協力するが,11月初めこれを離れてハンガリー社会主義労働者党およびハンガリー労農政府を組織。同党第一書記および首相となる。58年首相を辞するが,61-65年に再任。ソ連への忠誠と国内の自由化・民主化の両立を目ざした。88年書記長を辞任。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カーダール」の意味・わかりやすい解説

カーダール
Kádár János

[生]1912.5.22. ショモジャ,リエカ
[没]1989.7.6. ブダペスト
ハンガリーの政治家。 1931年に青年共産主義労働者連盟,翌年共産党に加入し数回投獄された。第2次世界大戦に地下抵抗運動を組織,45~46年ブダペスト市党委員会書記,46~51年党副書記長。 48年第一書記,内相に就任。 51年にチトー主義者として逮捕されたが,53年に釈放。 56年 10月のハンガリー動乱で,ナジ政権に入閣,党第一書記に就任。暴動の右傾化をみて社会主義労働者党を結成して第一書記に就任,ソ連の第2次介入を要請し,同時に首相就任を発表した。その後 58年まで首相を続け,61~65年にも再度首相に就任。その間一貫して党最高指導者の地位を保ち,東欧圏でも最も大胆な政治,経済の改革を漸進的な形で遂行した。そのため動乱期に最低水準にまで低下した国民の信頼を回復した。 77年レーニン平和賞受賞。 88年書記長辞任,89年すべての要職を退く。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「カーダール」の解説

カーダール
János Kádár

1912~89

ハンガリーの共産主義者,政治家。第二次世界大戦中,抵抗運動に参加。戦後,1948年に内相となるが,51年に逮捕され,54年に復権した。56年10月のハンガリー事件に際し,当初はナジ政権に加わるが,11月に国外に出てソ連の圧力のもとで新党と政府を樹立し,ナジ政権の崩壊後帰国して,党と政府の長として国内の安定化に努めた。60年代には国内融和に成功,68年からは経済改革も導入,70年代には自由化も進めた。80年代初めには一層の経済改革を導入したが,88年に失脚。

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世界大百科事典(旧版)内のカーダールの言及

【ハンガリー】より

…【家田 修】。。…

【ハンガリー事件】より

…【伊東 孝之】。。…

※「カーダール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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