カーター(Jimmy Carter)(読み)かーたー(英語表記)Jimmy Carter

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

カーター(Jimmy Carter)
かーたー
Jimmy Carter
(1924― )

アメリカ合衆国第39代大統領(在任1977~1981)。10月1日ジョージア州プレーンズに生まれ、信仰心あつい両親のもと深南部(ディープサウス)の自然の中で育った。1943年メリーランド州アナポリスの海軍兵学校に入学、第二次世界大戦のあと少尉に任官し原子力潜水艦の開発に従事した。父の死により海軍を辞め、家業のピーナッツ栽培と倉庫業を継いで成功したあと政治に志す。1962年民主党からジョージア州上院議員、1970年には同州知事に当選。1974年の任期終了後(州法で再選は禁止)大統領選出馬を表明、ウォーターゲート事件後の政治不信の季節に、「政治の牧師」として国民のプライドに訴え、現職の大統領フォードを破って1976年当選を果たした。大統領職から無用な権威を取り去って「開かれた政治」を目ざし国民との交流を図ったが、国内政治の領域では議会操縦に未経験であったため、エネルギー法案はじめ多くの施策が難航した。エンジニア的計画性が先だって指導力に欠けると批判されたが、外交面ではパナマ運河条約の締結、さらに中東和平実現のためイスラエル首相ベギンとエジプト大統領サダトの説得に成功するなど功績があった。しかし政権末年にイランで起きたアメリカ大使館員人質事件を解決できず、1980年の大統領選で元カリフォルニア州知事レーガンに大敗した。退職後ジョージア州アトランタにカーターセンターをつくり、世界平和のために奔走し、1994年北朝鮮の核開発をめぐる国際危機を自ら訪朝して解決するなど、「最良の元大統領」といわれた。これらの業績が評価され、「国際紛争の解決に尽力し、民主主義人権発展に貢献した」として2002年ノーベル平和賞を受賞した。

袖井林二郎

『持田直武他訳、日高義樹監修『カーター回顧録』上下(1982・日本放送出版協会)』『ハワード・ノートン、ボブ・スロッサー著、笠原佳雄訳『ジミー・カーターの奇跡――新しいアメリカを創る男』(1976・徳間書店)』『村田晃嗣著『大統領の挫折――カーター政権の在韓米軍撤退政策』(1998・有斐閣)』『ジミー・カーター著、飼牛万里訳『少年時代』(2003・石風社)』


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