カー(John Dickson Carr)(読み)かー(英語表記)John Dickson Carr

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

カー(John Dickson Carr)
かー
John Dickson Carr
(1906―1977)

アメリカの推理作家。ペンシルベニア州生まれ。カー・ディクスンCarr Dicksonおよびカーター・ディクスンCarter Dicksonの名も使用した。父親(弁護士、下院議員)の影響で法律の勉強を志したが、ジャーナリスト志望に転じ、パリへ遊学して歴史小説の習作に明け暮れたあと、アメリカへ戻り、長編推理の第一作『夜歩く』(1930)を書き上げてから本格的な作家活動に入った。1931年イギリス女性と結婚、48年帰米するまでイギリスで筆をとった。処女作をはじめ『魔女の隠れ家』(1933)、『火刑法廷』(1937)、『ユダの窓』(1938)など初期の作品から『皇帝嗅煙草(かぎたばこ)入れ』(1942)など中期にかけては、犯人の出入り不可能な密室殺人や人間消失など、常識では解決できない不可能犯罪を主題にした謎(なぞ)解きの傑作が多い。『ビロードの悪魔』(1951)のころからはしだいに歴史ものの色が濃くなり、怪奇、恋、冒険、歴史ロマンに手の込んだ謎解きを盛り込んだ本格的探偵小説の新境地が開かれている。これら約70編の長編のほか、数冊の短編集もある。名探偵としてフェル博士、チャーチルに似ているといわれるヘンリー・メリベル卿(きょう)などを活躍させた。そのほかコナン・ドイルの詳細な伝記『コナン・ドイル卿の生涯』(1949)がある。

[梶 龍雄]

『『世界推理名作全集6』(1969・中央公論社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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