カンフル(英語表記)Kampfer[ドイツ]

精選版 日本国語大辞典 「カンフル」の意味・読み・例文・類語

カンフル

〘名〙 (kampher, kamfer)
医薬品として用いる、精製した樟脳(しょうのう)強心剤とする。〔采覧異言(1713)〕
※思ひ出す事など(1910‐11)〈夏目漱石〉一四「カンフルは非常に能く利くね」
結婚(1967)〈三浦哲郎〉一〇「その刺激をカンフルにして辛うじて蘇生し」

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デジタル大辞泉 「カンフル」の意味・読み・例文・類語

カンフル(〈オランダ〉kamfer)

樟脳しょうのうのこと。クスノキから得られるほか化学合成もされ、中枢神経興奮・局所刺激・防腐作用がある。かつては蘇生そせい薬として知られた。カンファーカンフル剤
だめになりかけた物事を蘇生させるのに効果のある措置。カンフル剤。「大幅減税が景気回復のカンフルとなる」

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改訂新版 世界大百科事典 「カンフル」の意味・わかりやすい解説

カンフル
Kampfer[ドイツ]

カンファーcamphorともいう。ショウノウ(樟脳)の医薬品名。ショウノウは医薬品のほか,セルロイド,火薬,フィルムなどの原料とされ,防虫剤防臭剤などにも用いられる。カンフルは起死回生の強心薬としての意味をこめて比喩的に〈カンフル注射〉の言葉が用いられるが,現在では強心薬としての用途は限られている。カンフルの薬理作用として次のような性質が知られている。(1)中枢興奮作用 大量に用いれば大脳皮質運動野を刺激して痙攣けいれん)を誘発する。常用量でも延髄呼吸中枢および血管運動中枢を刺激して呼吸を促進し,血管を緊張させる。(2)心臓作用 心臓に対してカンフル自体は強心作用を示さず,かえって抑制作用を及ぼすが,体内で酸化されて生ずる代謝産物は心臓の収縮力を増大させて強心作用を呈する。とくにカンフルの酸化物の一種であるトランス-π-オキソカンファー(商品名ビタカンファー)は心臓に直接作用して心拍動をさかんにし,また,延髄の呼吸および血管運動中枢に作用して機能を促進させるので,呼吸,循環系の興奮薬として用いられる。(3)皮膚刺激作用 カンフルは外用すれば皮膚を刺激し血行を改善する作用があるので,凍傷,神経痛,リウマチなどに,カンフル精,セッケンカンフル擦剤,カンフル軟膏などとして用いる。
ショウノウ
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カンフル」の意味・わかりやすい解説

カンフル
かんふる
camphor

樟脳(しょうのう)のことで、カンファーともいう。クスノキの幹、根、葉の細片を水蒸気蒸留して得られるカンフルと樟脳油を分離精製したものが天然カンフルで、日本薬局方ではd-カンフルという。純合成したものがdl-カンフルで、合成樟脳ともいう。いずれも無色または白色半透明の結晶、結晶性粉末または塊で、特異な芳香があり、味はわずかに苦く、清涼感がある。中枢神経興奮作用、局所刺激作用、防腐作用などがある。かつては蘇生(そせい)薬として知られたが、現在はほとんど使われない。おもに外用剤として凍傷、神経痛、打撲傷、皮膚病などの薬に配合して用いられるほか、一般家庭用の衣類防虫剤として多くの市販品が知られる。

[幸保文治]

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百科事典マイペディア 「カンフル」の意味・わかりやすい解説

カンフル

カンファーとも。樟脳(しょうのう)の医薬名。中枢神経興奮薬。局所刺激作用,防腐作用があり,中枢神経を刺激して,心運動亢進,血圧上昇,呼吸量増大をきたす。興奮剤としてカンフル注射液を用いていたが,作用が不確実なため,現在ではあまり用いられない。神経痛,打撲症,しもやけなどにカンフル精または軟膏として外用する。なおカンフルは直接には心臓に抑制作用をもつが,体内で酸化されると強い強心作用を呈する。→ビタカンファー
→関連項目強心薬

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カンフル」の意味・わかりやすい解説

カンフル

カンファー」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内のカンフルの言及

【興奮薬】より

…〈覚せい剤取締法〉によりその使用は厳しく制限されている。覚醒剤(3)脳幹興奮薬 ピクロトキシン,ペンテトラゾール,カンフル,ニケタミド,ベメグリドなどは脳幹,ことに延髄に作用して,呼吸,血液循環の中枢を興奮させる。このうちのいくつかの薬物は,催眠薬や麻酔薬の中毒の際に呼吸興奮薬として使われるが,大量を与えたときは痙攣を起こす。…

【ショウノウ(樟脳)】より

クスノキに大量に含有されるテルペン系のケトン化合物。カンファー,医薬関係ではカンフルとも呼ばれている。特有のきつい芳香と焼けるような味をもつ無色透明の固体。…

※「カンフル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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