カワイノシシ(読み)かわいのしし(英語表記)red river hog

改訂新版 世界大百科事典 「カワイノシシ」の意味・わかりやすい解説

カワイノシシ (河猪)
African bush pig
Potamochoerus porcus

偶蹄目イノシシ科の哺乳類。赤褐色ないし黒褐色の美しい体色をもつアフリカ産のイノシシ。サハラ以南のアフリカとマダガスカル島分布。頸部(けいぶ)から腰部にかけての背筋に沿って白色たてがみをもち,長くとがった耳の先端には房毛(ふさげ)がある。たてがみは興奮すると逆立てられ,いっそうよく目だつ。耳の房毛は気分によってかえられる耳の位置の変化を目だたせ,仲間に気分を知らせる働きがある。体長1~1.5m,肩高55~80cm,体重55~80kg。熱帯雨林から草原まで,さまざまな生息環境にすみ,ふつう6~20頭,ときに40頭に達する群れで生活する。昼間は茂みに潜み,夜活動して,植物の根,果実爬虫類,卵,雛などを食べる。やぶをぬって巧みに走り,水に入って泳ぐのもうまい。雌は12~1月に2~8子を生む。子には褐色の地に淡黄色の縦縞がある。主要な天敵であったヒョウが人による狩猟のために激減した結果,本種の個体数は多くの地域で増加しており,農作物への被害がでている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カワイノシシ」の意味・わかりやすい解説

カワイノシシ
かわいのしし / 河猪
red river hog
[学] Potamochoerus porcus

哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目イノシシ科の動物。別名アカイノシシヤブイノシシともいう。分布は広く、アフリカの西部から中央部、東部、および南部の一部に生息する。体高50~75センチメートル、体重54~81キログラムほどで、長くて粗い毛が生える。口吻(こうふん)部は細長くとがり、耳も長くて先に毛の房が生える。老成した雄では、目の下方にいぼ状の突起が明瞭(めいりょう)となる。牙(きば)は短いが鋭い。毛色は産地によりさまざまである。南部や東部のものは暗褐色で黒っぽいが、西部のものは赤褐色を呈し、顔の黒と白の配色と鮮やかなコントラストをなし、きわめて美しい。森林やその周辺の深いやぶにすみ、6~20頭ほどの群れで暮らす。夜行性で動作はすばやく、泳ぎも巧みであるが、ヒョウが天敵である。雑食性で、木の根や果実のほか、鳥の卵、爬虫(はちゅう)類、昆虫なども食べる。1産3~6子を産み、子の体には白っぽい横縞(よこじま)がある。

[増井光子]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カワイノシシ」の意味・わかりやすい解説

カワイノシシ
Potamochoerus porcus; bush-pig

偶蹄目イノシシ科。ヤブイノシシともいう。体長1~1.5m。イノシシ属 Susのものに似るが,耳の先端に長い毛の総がある。尾が長く,先端にやはり毛の総がある。犬歯は小さい。夜行性で,日中は密生した藪の中に隠れている。歩く速度は速く,泳ぎもうまい。草類,種子,果実などの食物を捜してかなり広い地域にわたって行動する。アフリカのサハラ砂漠以南の地域とマダガスカル島に分布し,6~20頭ほどの小群で生活している。

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