日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
カロ(Jacques Callot)
かろ
Jacques Callot
(1592?―1635)
フランスの銅版画家。ナンシーに生まれる。少年時代にイタリアに行き、ローマでフィリップ・トマッサンに彫版の技術を学び、1612年から9年間フィレンツェに滞在、この間にハード・グラウンド・エッチングの技法を開発し、『カプリス』『インプルネタ』などの連作を制作した。21年故郷に帰り、28~31年の間しばしばパリに滞在。その後ナンシーに定住するが、ルイ13世によるロレーヌ地方への攻囲、ペストの流行を体験、これが連作『戦争の惨禍』(1633)として結実する。エングレービングとエッチングを併用した彼の技法は広くヨーロッパに普及したが、単に技法家であるだけでなく、乞食(こじき)、芸人、泥棒などを見つめた鋭い視線の点でも、マニエリスム期の特筆すべき画家であった。版画全作品は1400点に上るとされるが、完全なコレクションは残っていない。
[中山公男]
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