カレン族(読み)カレンぞく(英語表記)Karen

翻訳|Karen

精選版 日本国語大辞典 「カレン族」の意味・読み・例文・類語

カレン‐ぞく【カレン族】

〘名〙 (カレンはKaren) イラワジ川流域、ミャンマービルマ東部、タイ国西部に住む民族集団チベット‐ビルマ語族に属する言語使用

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改訂新版 世界大百科事典 「カレン族」の意味・わかりやすい解説

カレン族 (カレンぞく)
Karen

ミャンマー南東部のカレン州を中心に分布する民族集団で,チベット・ビルマ語派に属するとされるカレン語を話す。一部は低地ミャンマーやタイ西部にも住む。ミャンマーでは人口百数十万以上で,同国の少数民族中では最大の人口をもつといわれ,タイでは20万人以下と推定されている。スゴー,ポー,ブエなどの亜族に分かれるが,彼らの多くはミャンマー東部からタイ西部の低い丘陵地帯のジャングルを切り開き,陸稲を中心にした焼畑農業に従事していた。ところが,近年土地不足や人口増加のため,水田稲作技術が導入され,仏教に代表される平地文明の影響のもとで,これまでの祖霊信仰のような“血”の原理中心の個別主義的世界にも変化が現れている。水田の灌漑排水などの作業には,近隣のムラの人々や,時にはミャンマー人やタイ人といった他民族集団の人たちとの協力も不可欠だからである。しかし,歴史の流れは,むずかしい問題も生みだした。長い間イギリス領であったため,ミャンマーのカレン族はキリスト教の影響を受ける者が多く,仏教国ミャンマーへの同化をきわめて困難なものにしている。そのうえ,イギリスの植民地支配に協力したカレン族に対し,人口の大半を占めるミャンマー人は複雑な感情をもっていて,その矛盾は第2次大戦中に増幅された。戦後,カレン族はビルマ(現,ミャンマー)からの分離独立を希望したが,その夢はやぶられている。両者の間の禍根は戦後にも引きつがれ,内乱における反政府勢力の中心に,多くのカレン族が参加することにもなったのである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カレン族」の意味・わかりやすい解説

カレン族
カレンぞく
Karen

ミャンマー (旧ビルマ) のエイヤーワディ川流域からタイ西部にかけて居住し,カレン諸語を話す諸民族の総称。人口約 290万と推定される。最も多い白カレンはスゴー・カレンとポー・カレンとに大別されるが,ほかに赤カレン (ブレ,パダウン,インバウ,ザエインの各集団を含む) がいる。焼畑による稲作と水稲耕作を営む。入墨,腕輪,首輪,足輪などで身体装飾をし,弩 (いしゆみ) ,毒矢を武器とし,聖物として銅鼓をもつ。氏族組織を欠き,年長者の権力が強い。宗教は仏教徒が多いが,キリスト教徒もみられ,さらに一部にはアニミズムも重んじられる。第2次世界大戦後はカレン民族同盟を結成して自治国建設のための反乱を起すなどの動きをみせたが,1954年6月ビルマ政府と和解,自治権をもつ州としてカイン州が認められた。

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世界大百科事典(旧版)内のカレン族の言及

【ミャンマー】より

…タイ諸語系の民族のうち最も人口が多いシャン族は,タイ,ラオスと国境を接したシャン州に住んでいる。カレン族はサルウィン川流域のカヤー,カレン両州とイラワジ・デルタに多い。アウストロアジア語系のモン族はサルウィン川下流域のモン州に,パラウン族はシャン州北部にそれぞれ住んでいる。…

※「カレン族」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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