精選版 日本国語大辞典 「カルノー」の意味・読み・例文・類語
カルノー
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フランスの技術者,物理学者。熱力学第2法則の原型ともいえるカルノーの定理を見いだしたことで知られる。フランス革命政府軍の政治家であった科学技術者L.N.M.カルノーの長男。1814年エコール・ポリテクニク卒業後軍務に服したが,24年休職を許され,以後科学研究に専念した。彼の関心は医学,道徳,政治,経済など広い範囲に及んだが遺稿の焼失が惜しまれる。最大の業績は,《火の動力についての考察》(1824)にまとめられた熱機関の理論において熱力学の最初の一歩を踏み出したことである。当時は蒸気機関が普及し,産業革命の推進力となっていたが,改良の指針となる理論はまだなかった。彼は,物質に膨張,収縮を繰り返させて熱から動力をとり出すには異なった温度の二つの熱源が必要であること,可逆な過程は損失のない過程であることに着目した。気体の行う可逆な循環過程としてカルノーサイクルというものを想定し,高熱源と低熱源の間でカルノーサイクルを行う熱機関の効率(とり出せる仕事と投入された熱量の比)は,二つの熱源の温度を共通とするあらゆる熱機関のうちで最大であり,作業気体の種類によらず熱源の温度だけで定まること(カルノーの定理)を,永久機関は存在しえないことと熱素説とを基にして示した。その内容は熱力学の第2法則にほかならなかったが,真価が認められたのは彼の死後B.P.É.クラペイロンが広く紹介してからである。
執筆者:安孫子 誠也
フランスの軍人,政治家。〈大カルノー〉ともいう。パリで砲術と築城学を学んだ後,北部地方の部隊に勤務。ロベスピエールのいたアラスやディジョンのアカデミーの会員にもなる。革命勃発後は,1791年に立法議会議員,92年に国民公会議員に選出され,さらに93年8月,公安委員会の委員にも指名された。その間,一貫して軍事問題の専門家として手腕を発揮し,徴兵制施行により近代的軍隊を編成し,攻撃的機動戦術を駆使して,93年秋にはワッティニーの勝利を導き,〈勝利の組織者〉と呼ばれた。テルミドール反動後も,元老会議員,総裁政府Directoireの総裁を歴任。フリュクティドール18日のクーデタで一時ドイツに亡命したが,1800年ナポレオンにより陸軍大臣に指名された。百日天下の際にも内務大臣を務めたが,王政復古後,追放され,ドイツのマクデブルクで死去。数学・力学の著書もあり,学士院会員でもあった。
執筆者:小井 高志
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…長い飼育の歴史を通して,利用目的によりさまざまな品種がつくられた。これらの品種の中には,食用のもの(カルノー,モンダンなど),通信用の伝書バト(リエージュ,アントワープなど),鳴声を鑑賞するもの(トランペッター,タイコバトなど),飛行の巧みさを鑑賞するもの,姿の美しさを鑑賞するもの(クジャクバト,ジャコビンなど)などが含まれる。放飼いや飼鳥の逃げ出したものは半野生化して繁殖し,市街地,公園,神社,寺院などで見ることができる。…
…しかし産業革命の波の中で永久機関への模索が続き,1775年にパリ科学アカデミーはこの種の考案の受理を拒否したが,新発明の提唱はあとを絶たなかった。19世紀に入って熱機関についての物理的研究が進み,N.L.S.カルノーが《火の動力についての考察》(1824)で永久機関不可能の原理をうちたてて熱力学の基礎をつくり,〈単に最初の衝撃の後かぎりなく続く運動というだけでなく,動力を無限につくり出し,自然界のすべての静止物体をつぎつぎにその状態から引き出し,それによって慣性の法則を否定することができ,究極には全世界を運動に投げ込んでその運動を保持し,かつ絶えず加速するに足る力を自分からくみ出すことのできるような装置〉を〈永久機関〉と規定した。カルノーは〈もしそれが可能なら水や空気の流れや可燃物の中に動力を求める必要はなく,欲しいだけくみ出しうる尽きることのない動力の源泉が利用できることになろう〉と言っている。…
…しかし,J.L.R.ダランベールが1743年の著書《力学》の中で,デカルトの考えた“ちから”は力の時間積分であり,ライプニッツの“活力”は力の位置座標についての積分(つまり仕事)であることを指摘するにおよび,この論争もしだいにおさまっていった。なお,83年N.L.S.カルノーは“活力”の保存という概念をすでに暗示しているが,彼の業績は19世紀半ばまで一般には知られなかった。 エネルギーという言葉は,ギリシア語energeia(接頭語en=内部に+ergon=仕事)に由来し,〈物体内部に蓄えられた仕事をする能力〉という意味で,T.ヤングがそれまでの“活力”に代わるものとして用いた(1807)が,1850年代初期にW.J.M.ランキンやW.トムソン(ケルビン)らがこの語を意図的に再使用し始めるまでは一般には使われなかった(英語ではforce,ドイツ語ではKraftなどがそれに当てられていた)。…
…熱機関の効率を知るために,N.L.S.カルノーが考案した可逆サイクル。19世紀の初め,熱機関の急速な発達とともに,その効率を知ることが重要な問題としてとり上げられるようになった。…
… ランフォードに始まる研究は,仕事すなわち力学的エネルギーが熱に転化することを明らかにしたが,逆に熱から仕事をとり出す過程のほうの研究も,産業革命の主役,蒸気機関の改良という技術的要求から18世紀の半ばころから盛んになっていた。すでに1765年にJ.ワットは凝縮器を発明していたが,熱機関の理論的研究はS.カルノーによって始められた。彼は水が高いところから落下するとき水車を回すのと同じように,一般に熱機関では高温の熱源から低温のほうに熱素が移るときに動力が発生すると考えた。…
※「カルノー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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