カルノー石(読み)かるのーせき(英語表記)carnotite

翻訳|carnotite

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カルノー石」の意味・わかりやすい解説

カルノー石
かるのーせき
carnotite

堆積(たいせき)型ウラン鉱床中に産する重要なウラン鉱石鉱物。砂岩中の炭質物質の周りに濃集して生成され、既存の初生ウラン鉱物バナジウムを主成分とする物質の酸化分解と、地下水の作用で沈殿するものと考えられている。原子配列上は通常のバナジン酸基と異なり、VO5というV5+(5価のバナジウムイオン)を囲む正方錐(すい)が2個、稜(りょう)を共有して結合した[V2O86-という基本基をもつ。そのためにバナジン酸塩ではなく、ほかの多重バナジン酸塩鉱物同様、系統分類上酸化物に入れられることもある。基本基の一部を構成する[V2O8]をバナジン酸基とみるか酸化物とみるかによって系統分類上の位置が異なる。カルシウムCa置換体ツヤムン石やその低位水化物メタツヤムン石metatyuyamunite(化学式Ca[(UO2)2|V2O8]・3~5H2O)とは外見上区別しがたい。初期の原子爆弾の原料となったウランは、おもにこの鉱物から抽出精錬された。フランスの工業技術者カルノーMarie Adolphe Carnot(1839―1920)にちなんで命名された。

加藤 昭 2016年2月17日]

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改訂新版 世界大百科事典 「カルノー石」の意味・わかりやすい解説

カルノー石 (カルノーせき)
carnotite

ウラニルバナジン酸塩鉱物の代表種の一つ。化学組成K2(UO22(V2O8)・3H2O。単斜晶系。鮮黄色~鮮黄緑色。肉眼的には土状の粉末であるが,顕微鏡下では微細な板状結晶が見えることもある。主産地はアメリカ西部のコロラド高原地方。同地では,三畳系~ジュラ系砂岩層中に形成されている,いわゆる砂岩型ウラン鉱床の鉱石鉱物で,砂岩中の割れ目や砂粒間の空隙を埋めたり,植物破片を置き換えたりして産する。製錬時にはウラン,バナジウム,時にラジウムが回収される。日本では鳥取県東郷鉱山で標本的に産出しただけである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カルノー石」の意味・わかりやすい解説

カルノー石
カルノーせき
carnotite

K2(UO2)2(VO4)2・3H2O 。レモン黄ないし緑黄色放射性鉱物。粉末状集合,薄膜状,斑点をなす。酸類にたやすく溶ける。比重 4.70 。砂岩中に産し,2次ウラン鉱物として重要。

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