カマキリ(淡水魚)(読み)かまきり(英語表記)fourspine sculpin

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カマキリ(淡水魚)」の意味・わかりやすい解説

カマキリ(淡水魚)
かまきり / 鎌切
蟷螂
fourspine sculpin
[学] Cottus kazika

硬骨魚綱スズキ目カジカ科に属する淡水魚。青森県以南の太平洋側と日本海側(本州)、四国、九州の河川に分布する。日本固有種。別名アユカケ。和名カマキリと別名アユカケの名の由来は、前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)にある棘(とげ)で、昆虫のカマキリが虫をとらえるように、好物のアユなどの小魚を捕まえることに起因する。

 体はハゼ型で、頭は丸く、その背面と目の下に隆起線がないこと、前鰓蓋骨に4本の棘があり、最上棘(きょく)は上方へ強く曲がること、口蓋骨に歯があることなどで他の淡水域にすむカジカ類と区別する。体側に4本の暗色の横帯がある。河川の中流域の瀬の礫底(れきてい)を好む。産卵期は12月から翌年3月で、このころ腹を上にして川を下るが、降るあられに腹を打たせるという情景からアラレガコともよばれる。河口から沿岸の岩礁域で産卵する。卵は小さく、直径は1.5~1.7ミリメートル。孵化(ふか)した仔魚(しぎょ)は沿岸域で1か月ほど浮遊生活をして、全長14ミリメートルぐらいになって川を上る。全長30センチメートルぐらいになる。近年、堰(せき)などによって遡上(そじょう)が妨げられ、全国的に減少し、熊本県では絶滅した。福井県の一部の生息域では国の天然記念物に指定されている。ゴリ料理と称して賞味する。

[尼岡邦夫]

 カジカとよく似ているため混称されることもある。幼魚のとき一度海に下る。水の澄んだ川の浅いところにいるが、とくに福井県の九頭竜(くずりゅう)川に多くすむといわれている。白焼きにしたカマキリを長時間番茶で煮て、砂糖しょうゆで味つけしたものは骨までやわらかく、福井県の名物料理である。また、カマキリはガクブツともいわれ、みそ汁に入れたものをがくぶつ汁という。

河野友美大滝 緑]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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