カノン(キリスト教用語)(読み)かのん(英語表記)canon 英語

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

カノン(キリスト教用語)
かのん
canon 英語
Kanon ドイツ語

キリスト教用語。ギリシア語kanōn(カノーン)は、葦(あし)、測桿(そっかん)を意味するシュメール語に由来し、規範、原則を意味する。アンフィロキウス(4世紀末、イコニオムの主教)以来、聖書を正典カノン)とよぶ。教理の基準として、信仰と生活に対する特別な権威をもつ書物として、信仰的承認の対象である。聖書の全体像が、「イエスはキリスト(救世主)である」との真理を決定的に証言していると信じられる。カノン自体を崇拝する行為は逸脱である。カノン結集の歴史は複雑である。『旧約聖書』はヤムニア会議(1世紀末、ユダヤ教)の結果を継承し、のちにトリエント公会議(1546、カトリック)で外典をカノンに追加した。『新約聖書』は、古代の異端思想との対決の過程で内容の選定がなされ、カルタゴ会議(397)で決定済みの結集の内容をトリエント公会議で改めて議決した。日本聖書協会の『旧約聖書』の型は、配列は七十人訳―ブルガータ訳の伝統を受けつつ、内容はユダヤ教聖書と一致する型である。

[川又志朗]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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