カナメモチ(読み)かなめもち

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カナメモチ」の意味・わかりやすい解説

カナメモチ
かなめもち / 要黐
[学] Photinia glabra (Thunb.) Maxim.

バラ科(APG分類:バラ科)の常緑小高木。高さ3~7メートル。葉は互生し、長さ1~1.5センチメートルの葉柄があり単葉、長楕円(ちょうだえん)形、長さ5~10センチメートル、縁(へり)に細かい鋸歯(きょし)がある。革質光沢があり、表面は毛はない。5~6月、枝の先に径約8ミリメートルの白色の5弁花を多数開く。雄しべは20本、雌しべの花柱は2本、子房は毛があり、2室で半下位。果実はなし状果、楕円状球形、径約5ミリメートル、赤く熟す。静岡県以西の本州、四国、九州山地に生えるが、庭木生け垣としてよく植えられ、朝鮮や中国、東南アジアにも分布する。新葉が赤色を呈するので、別名アカメモチという。オオカナメモチP. serratifolia (Desf.) Kalkman(P. serrulata Rindl.)はカナメモチより葉が大きく基部が円い。沖縄、台湾、東南アジア、中国大陸に分布し、栽培もされる。中国名を石楠といい、古く日本ではこの字をシャクナゲに誤用したため、現在でもシャクナゲの漢字名としてこの字を慣用とする。カナメモチ属は約60種、おもにヒマラヤから日本にかけて分布し、まれにスマトラ島北アメリカ中央アメリカにもみられる。子房は半下位で2枚の心皮下部は合生し、上部は離生する。

[鳴橋直弘 2019年12月13日]


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改訂新版 世界大百科事典 「カナメモチ」の意味・わかりやすい解説

カナメモチ
Photinia glabra Maxim.

暖地の丘や低山に生える高さ10m以下のバラ科の常緑の低木か小高木。樹皮は灰黒色から黒褐色。葉は互生し,堅くて長楕円形,先はとがり,ふちに細かい鋸歯があり,両面ともまったく無毛で,表面には光沢がある。5,6月ごろ,枝先に白い花が集まって咲く。花弁は5枚で倒卵形,おしべは20本。果実は楕円状球形で,秋に赤く熟する。東海地方以西の本州,四国,九州に,また中国大陸にも分布する。西南日本では生垣として植えられることが多く,春に出る新葉が赤くて美しいので,アカメモチともいわれる。また,多数の白い花を,ソバの花に見たてて,ソバノキともいう。

 近縁のオオカナメモチP.serrulata Lindl.は,琉球,台湾,中国大陸南部,フィリピンなどに分布し,乾燥した葉を石南葉と呼び,薬用にする。日本でも近年,岡山県と愛媛県で野生状態のものが見つかっている。
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百科事典マイペディア 「カナメモチ」の意味・わかりやすい解説

カナメモチ

アカメモチとも。静岡〜九州,中国大陸の暖地の山地にはえるバラ科の常緑小高木。葉は長楕円形,革質で光沢があり,縁には細鋸歯(きょし)がある。新葉は紅色で美しい。5〜6月,小枝の先に,5弁の小さい白花を多数,円錐状につける。果実は楕円状球形で,晩秋,赤熟。樹は庭木,生垣とする。

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