カタバミ(読み)かたばみ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カタバミ」の意味・わかりやすい解説

カタバミ
かたばみ / 酢漿草
[学] Oxalis corniculata L.

カタバミ科(APG分類:カタバミ科)の多年草。全体に薄く毛が生える。根は肥厚し、そこから地上に多くの走出枝を出し、上部は斜上して長さ10~30センチメートルになる。小枝が多く、地に接する茎からさらに細い根を出すことがある。葉は根生し、また茎上では互生して、長柄の先にクローバーに似た3枚の小葉をつける。小葉は幅約1センチメートルの扁倒卵形(へんとうらんけい)で先端がへこみ、裏と縁(へり)に毛があり、昼は開き夜になると裏を外側にして二つに閉じる。普通は緑色であるが、紅紫色や緑紫色のものもある。花期は6~9月。花序の軸は直立茎の上に腋生(えきせい)し、ほぼ散形に1~8個の花を下向きにつける。花は黄色、径約8~10ミリメートル。萼片(がくへん)5枚、花弁5枚。雄しべ10本、子房は上位で5本の花柱がある。蒴果(さくか)は円柱形で長さ2~2.5センチメートル。細かい毛があり、熟すと5裂して暗褐色の種子を多数はじき出す。種子は広卵形で横じわがある。北海道から南西諸島、小笠原(おがさわら)に生育し、世界の暖温帯に広く分布する。全体にシュウ酸を含むため酸味があり、スイモノグサともいう。葉形が美しいので家紋酢漿草紋)として用いられてきた。観賞用にはオキザリスの名で、熱帯アメリカ、アフリカ原産のものが十数種栽培されている。

[小林純子 2020年5月19日]


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改訂新版 世界大百科事典 「カタバミ」の意味・わかりやすい解説

カタバミ
yellow wood sorrel
Oxalis corniculata L.

庭や道端に普通に見られるカタバミ科の多年草。世界の温帯から熱帯に広く分布する雑草和名は傍喰(かたばみ)で,葉の一端がかじられたようだからと言われるが,明らかでない。根はやや太く,根ぎわから数本の茎が分かれて地上をはう。葉は,倒心臓形の3枚の小葉からなる掌状複葉で,長い柄があり,小葉は昼は開き,夜に閉じる。春から秋にかけて,葉のわきから花茎を伸ばし,先に1~8個の花を散形につける。花は離生する黄色い5枚の花弁が放射相称に並ぶ。蒴果(さくか)は円柱形で,熟すと自然に裂けて種子をはじきだす。全体にシュウ酸を含み,酸味が強いので酢漿草(かたばみ)とも書かれ,スイモノグサの名があり,料理に利用される。中国やインドで薬用にされ,植物体のしぼり汁はグラム陽性菌に対する殺菌作用があることが知られている。ムラサキカタバミO.martiana Zucc.は南アメリカ原産で,江戸時代に観賞用に栽培されたが,現在では畑の害草になっている。なお,日本ではカタバミがデザイン化されて紋様になっている。
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百科事典マイペディア 「カタバミ」の意味・わかりやすい解説

カタバミ

人家の周囲や道ばたなどに多いカタバミ科の小型の多年草。温帯〜熱帯にかけ,ほぼ世界的に分布する。茎や葉はかむとすっぱい。葉は倒心臓形の3小葉に分かれる。春〜秋,葉腋から出た花柄の先に,径8mm内外の黄色の5弁花が数個つく。果実は円柱形で,熟すと種子をはじき飛ばす。花や葉は就眠運動をする。ほかに日本にはミヤマカタバミなど数種があり,ムラサキカタバミハナカタバミなどが観賞用に栽培され,また野生化している。
→関連項目球根

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カタバミ」の意味・わかりやすい解説

カタバミ
Oxalis corniculata

カタバミ科の多年草で,庭や路傍に普通に生え,雑草として広く世界に分布する。茎は地上をはったり斜めに立上がったりして,長さ 10~30cmとなる。葉は互生し,細く長い葉柄と3小葉から成る複葉で,小葉は心臓形で夜間は閉じる。春から秋にかけて,葉腋に花茎を出し,黄色い5弁の花を散形状につける。果実は円柱形で,熟すると裂けて反転し多数の種子をはじき出す。葉や茎にシュウ酸を含み酸味がある。

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世界大百科事典(旧版)内のカタバミの言及

【オキザリス】より

…カタバミ科カタバミOxalis(英名wood sorrel,sorrel。sorrelはギシギシ属Rumexもさす)は世界各地に約300種が広く分布する草本植物であるが,そのなかで花が大きく観賞用に栽培されるものが,オキザリスの名で呼ばれることが多い(イラスト)。…

※「カタバミ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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