カクレウオ(読み)かくれうお(英語表記)messmate pearlfish

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カクレウオ」の意味・わかりやすい解説

カクレウオ
かくれうお / 隠魚
messmate pearlfish
[学] Encheliophis sagamianus

硬骨魚綱アシロ目カクレウオ科に属する海水魚。日本海側では富山県、太平洋側では千葉県以南、小笠原諸島(おがさわらしょとう)に分布する。体はウナギ状に延長するが側扁(そくへん)し、尾端は鋭くとがる。肛門(こうもん)は喉部(こうぶ)に開き、鱗(うろこ)や腹びれがないことが特徴。背びれと臀(しり)びれは、体の前部から始まって尾びれに連続する。体色は淡灰色で褐色の小斑点(はんてん)がやや密に散在する。全長20センチメートル。水深30~100メートルまでの砂礫(されき)底にすみ、フジナマコオキナマコトラフナマコなどの腸内に隠れる珍しい習性がある。夜行性で、昼間はナマコの体内に潜み、夜になると出て遊泳し、小形甲殻類などを食べる。ナマコが水を排出するため、肛門を開いたときに頭から潜り込むが、肛門が閉じているときは細い尾の先端を差し入れ、体をねじりながら強引に潜入する。

 1匹のナマコに数匹が隠れていることもある。普通ナマコに危害を与えることはないが、なかには宿主の内臓を食べる種類もいる。底引網でとれることがあるが、利用価値はない。日本の沿岸から6属13種ほど報告されている。

岡村 收・尼岡邦夫 2015年11月17日]

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改訂新版 世界大百科事典 「カクレウオ」の意味・わかりやすい解説

カクレウオ (隠魚)
Encheliophis sagamianus

スズキ目カクレウオ科の海産魚。相模灘以南各地の沿岸のやや深いところにすむ。全長約20cmに達し,体色は淡灰色で小黒点が多数散在する。体は細長く後部にいくほど細くなる。体にはうろこ,腹びれがなく,肛門がのど部にある。これらの形態的特徴は本種がフジナマコやときには大型のヒトデの腸内にすむ習性をもつことと密接な関連があると考えられている。ナマコの体内に入るときには,細い尾部から後ずさりするようにし,ナマコの肛門から侵入する。ナマコには肛門内の総排出腔に開く呼吸樹と呼ばれるものがあり,総排出腔の筋肉の運動により水を呼吸樹に出し入れして呼吸している。そのため,カクレウオはナマコの体内にいても呼吸などが容易にできると考えられている。まれに底引網などで漁獲されるが利用価値はない。カクレウオ科には日本からはソコカクレウオ,シロカクレウオなど8種が知られ,本種と同様の習性をもつことが知られている。
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百科事典マイペディア 「カクレウオ」の意味・わかりやすい解説

カクレウオ

カクレウオ科の魚。全長20cmに達する。しりびれは背びれより高く,胸びれの下から始まる。体は淡い灰色で褐色の小斑点が散在。本州中部〜南部に分布。底生性でフジナマコやときに大型のヒトデの腸内にすむ。肛門が鰓孔(さいこう)のそばにあるのは,こうした習性と関連があると思われる。食用価値はない。ほかに日本では,ソコカクレウオ,シロカクレウオなど8種のカクレウオ科の魚が知られている。
→関連項目ナマコ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カクレウオ」の意味・わかりやすい解説

カクレウオ
Encheliophis sagamianus

アシロ目カクレウオ科の海水魚。全長 20cm。体は側扁して細長く,尾部は特に細い。鱗,腹鰭を欠く。体は淡灰色で一面に小褐色点が密に分布する。フジナマコなどの腸内に隠れる奇習で知られる(→共生)。富山県,東京湾相模湾の浅海に分布する。

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