カイン(英語表記)Cain

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精選版 日本国語大辞典 「カイン」の意味・読み・例文・類語

カイン

(Cain) 旧約聖書創世記の中のアダムイブ長子。弟アベル供物が神に納められ、自らの供物は顧みられなかった事を恨み、弟を殺し、神に追われた。〔モダン辞典(1930)〕

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デジタル大辞泉 「カイン」の意味・読み・例文・類語

カイン(Cain)

旧約聖書創世記に記されるアダムイブとの長子。自分の献物が神に退けられたのを恨んで弟アベルを殺し、エデンの東にあるノドの地に追放された。

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改訂新版 世界大百科事典 「カイン」の意味・わかりやすい解説

カイン
Cain

アダムとイブの長子。旧約聖書の《創世記》第4章に,その弟アベルAbelとの物語が記されている。農耕にたずさわるカインと牧畜をいとなむアベルは,各自の収穫物を神にささげるが,ヤハウェはアベルの供物を喜び,無視されたカインは怒り,弟を殺す。カインは神にエデンの東のノドNodの地に追放される。楽園追放から続く人間の堕落の物語であり,遊牧民族と定住農耕民族の抗争が背景にあるともみなされている。しかし美術にこの物語が登場する場合は明らかに,旧約聖書と新約聖書の対比とその一致という神学的観点からで,殺人者カインはユダヤ教徒を,アベルはキリスト教徒を象徴する。さらにアベルはキリストの予徴,彼の供物の小羊は聖体の秘跡の象徴,彼の死はキリストの死の予告と考えられている。美術では,《創世記》の記述に従って,〈カインとアベルの供物〉〈アベルを殺害するカイン〉〈カインの追放〉が主要3場面を構成する。しかし外典を典拠に他のエピソードも豊富に描かれ,〈初子カインに産湯をつかわすイブ〉〈少年カインの嫉妬〉〈復讐を叫ぶアベルの血〉〈殺人を隠蔽するカイン〉〈アダムとイブの嘆き〉〈ラメクLamechに殺されるカイン〉などの場面が表されることがある。すでに初期キリスト教時代のカタコンベ壁画や石棺浮彫にカインとアベル(とくに〈供物場面〉)が描かれているが,連続した物語場面としての主要3場面は3世紀以降あらわれ,12世紀のビザンティン美術(モザイク)やロマネスク美術(柱頭彫刻群,フレスコ壁画)に豊富な作例がある。ルネサンス以降はこの主題は美術においてはまれとなるが,文学においてはヘッセの《デーミアン》(1919)に代表されるように,兄弟殺しおよびカインの悔恨,神の呪いという主題のもとに,この物語はしばしば用いられている。日本においても有島武郎の《カインの末裔》(1917)などがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カイン」の意味・わかりやすい解説

カイン
かいん
ayin ヘブライ語
Cain 英語

『旧約聖書』の「創世記」4章に登場するアダムとエバ(イブ)の長子。アベルはその弟。カインは土を耕し、アベルは羊を飼った。2人が収穫物を神ヤーウェへ捧(ささ)げると、神はアベルの供え物だけを喜んだ。カインにおちどはないが、神はカインの反応を試したのである。「罪が門口に待ち伏せしている。……あなたはそれを治めねばなりません」。しかし、カインはアベルを憎み殺害した。人類最初の殺人事件である。その血を吸った大地は耕しても実らず、カインは呪(のろ)われて放浪の身となった。そのとき神は、カインを助ける別の手段を考えた。カインを殺す者は7倍の復讐(ふくしゅう)を受けるであろう、と。かくして、カインは神の前を去って、エデンの園の東にあるノドの地に住み、妻をめとって一子エノクをもうけた。この物語の背景には、農耕定住民と牧羊移動民との対立があり、イスラエルの神は、後者の生活様式とその祭儀に高い価値を与えたと考えることができよう。

[市川 裕]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カイン」の意味・わかりやすい解説

カイン
Cain

創世記』4章に記されているアダムとイブの長子。ヤハウェがカインの捧げた農産物の供物よりも弟アベルの捧げた動物犠牲のほうを喜んだのをねたんでアベルを殺害した。この罪により,罰として定住していた土地より追われ,放浪の旅に出た。その後,ノドの地に住み,子孫のトバルカインは青銅や鉄を鍛える者となった。この物語は人類最初の殺人として記されているが,定住民の側からすると,カインという名で示されている部族がいかにして遊牧の民となるにいたったかの経緯を示していると考えられる。その部族はケニ人であるともいわれ,また別の解釈によればカインは都市建設者であり,古代における鍛冶技術者の組合ともされる。

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百科事典マイペディア 「カイン」の意味・わかりやすい解説

カイン

旧約聖書中の人物。アダムとエバの長子。農耕を業とした。牧畜にたずさわる弟アベルAbelを恨んで殺害,神に追われ放浪者となった(《創世記》4)。美術,文学の作例多数。

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世界大百科事典(旧版)内のカインの言及

【骨】より

…のち武器を捨てた地は〈あご骨の丘〉と呼ばれたという。カインがアベルを殺した武器は聖書に記されていないが,後世の絵画でしばしばあごの骨を手にしたカインが描かれたのはサムソンの話に倣ったものである。古代エジプトのシビという笛は人の脛骨から造られた。…

※「カイン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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