オーマン
おーまん
Robert John Aumann
（1930― ）
アメリカとイスラエルの両国籍をもつ数学者、経済学者。ドイツのフランクフルト生まれ。1955年にアメリカのマサチューセッツ工科大学で数学の博士号を取得。プリンストン大学、カリフォルニア大学バークリー校、スタンフォード大学、ニューヨーク州立大学などで教え、1981年からイスラエルのヘブライ大学教授を務める。ゲーム理論を社会科学分野に応用し、人間社会の対立と協力への理解を深めた功績で、2005年にノーベル経済学賞をT・C・シェリングとともに受賞した。
オーマンは、シェリングの分析を数学的に定式化し、経済や社会、政治などの広い分野の問題にゲーム理論を適用する基礎を確立するのに貢献した。とくに「情報不完備な繰り返しゲーム理論」を導入し、長期的な取引は信頼関係を生み、利害の対立する者（経済主体）とでも、うまく協調できることを、一般性の高い数学的モデルで証明した。繰り返しゲーム理論は価格競争、組織的談合、貿易紛争などの幅広い社会・経済現象を巧みに説明できるうえ、世界貿易機関（WTO）、地球温暖化防止のための京都議定書、中世のギルド組織の存在意義なども理論的に明らかにした。日本の系列取引や終身雇用制などの日本的慣習にも経済合理性があることをも、うまく説明している。また1976年には論文「Agreeing to Disagree」で、駆け引きする経済主体が互いのすべてを知らない場合、交渉の決着がどう変化するかという「共通認識」（common knowledge）の概念をゲーム理論に導入し、ゲーム解存在のための認識的条件を示した。
ゲーム理論の揺籃(ようらん)期からその発展に中心的な役割を果たし、1989年の著作『Lectures on Game Theory』（『ゲーム論の基礎』）はゲーム理論の代表的教科書として、世界の多くの大学で使用されている。
［金子邦彦］
『丸山徹、立石寛訳『ゲーム論の基礎』（1991・勁草書房）』
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
オーマン
Aumann， Robert J.
[生]1930.6.8. フランクフルト
イスラエルの数学者。 1938年家族とともにアメリカ合衆国に移住。 1950年ニューヨーク市立大学を卒業，1955年マサチューセッツ工科大学 MITで博士号を取得，その後プリンストン大学で研究に従事した。 1959年イスラエルに移り，ヘブライ大学の教壇に立ち，助教授 (1964～68) ，教授 (1968～2001) を歴任し，2001年に名誉教授に就任。アメリカの大学でも教鞭をとった。ゲームの理論に関する研究を進め，対立と協力に関する多くの問題を数学的に定式化し，無限繰り返しゲームと呼ばれる方法論と分析を通じて，長期的な交渉が導く結果を明らかにした。 2005年アメリカの経済学者トマス・C.シェリングとともにノーベル経済学賞を受賞。 1994年イスラエル経済学賞受賞。『ゲーム論の基礎』 Lectures on Game Theory (1989) など著作多数。
オーマン
Oman， John Wood
[生]1860.7.23. オークネイ
[没]1939.5.17. ケンブリッジ
イギリスの長老派教会に属する神学者。エディンバラ大学，合同長老教会の神学大学で学んだのち，ドイツへ留学。主著『自然と超自然』 The Natural and the Supernatural (1931) では，宗教経験の独自性と同時に，他の諸経験と関連し合っていることを主張した。ほかに『幻と権威』 Vision and Authority (02) ，『教会と神の秩序』 The Church and the Divine Order (11) ，『恵みと人格』 Grace and Personality (17) などがある。
オーマン
Oman， Sir Charles William Chadwick
[生]1860.1.12. インド
[没]1946.6.23. オックスフォード
イギリスの歴史家。軍事史の権威で，オックスフォード大学近代史教授 (1905) ，王立歴史学会会長 (17～21) を歴任。主著"Wellington's Army" "On the Writing of History"。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
