オードブル(読み)おーどぶる(英語表記)hors-d’œuvre フランス語

精選版 日本国語大辞典 「オードブル」の意味・読み・例文・類語

オードブル

〘名〙 (hors-d'œuvre)
① 正式の西洋料理の献立で、スープの前に出る軽い料理。前菜。〔音引正解近代新用語辞典(1928)〕
※青春怪談(1954)〈獅子文六〉性に関する一章「彼は、静かに、オウ・ドゥヴルを皿へとりわけながら」
② バーなどで、酒のつまみとする簡単な料理。

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デジタル大辞泉 「オードブル」の意味・読み・例文・類語

オードブル(〈フランス〉hors-d'œuvre)

《作品のほかに、の意》西洋料理で、食欲を促すため、食事の最初に出す軽い料理。前菜ぜんさい。オルドーブル。
[類語]前菜ザクースカアンティパスト

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オードブル」の意味・わかりやすい解説

オードブル
おーどぶる
hors-d’œuvre フランス語

おもな料理が供される前に勧められる小品料理の総称で、一般に前菜と訳されている。イギリス、アメリカではアペタイザーappetizer、ロシアではザクースカzakuskaとよばれている。中国料理のチエンツァイ(前菜)もオードブルの類に入れられる。

 ギリシア・ローマの古代からあったものとは考えられない。かつてロシアでは会食の前に別室で酒(ウォツカ)を飲む習慣があり、そこで突き出しに出される料理を、しばしばフランスの名司厨(しちゅう)長を呼んでつくらせた。ロシア前菜はこれらの人々によって完成されたという。フランスの前菜は、フランスの家庭から出てきたといわれる。家庭で肉は昼と夕の分をまとめて買い、それが余ることがあると、翌日の昼にはそれがコールドミートとなる。これを人数分に切り分けるが、これだけでは寂しいので、貯蔵品のラディッシュ、オリーブ、チョロギピクルス、ニシンの冷薫、カビィヤール(キャビア)、アンチョビーなど手持ち材料で趣(おもむき)を加える。これが冷前菜である。これに対して、一度火を通した残り物その他を利用して温かく調理した温前菜もある。フランスでは、このように前日の残り物を巧みに利用して、昼食時に勤めから帰ってくる主人に供した。近年は目で見て、舌で味わうことにより食欲をそそるようにつくるようになった。小さく美しい形、繊細な味、巧みな材料の取り合わせ、色彩豊かな盛付け、材料の重複を避けるなど、細かい配慮を必要とする。日本では宴会料理がレストラン、ホテルなどで独自に発達し、昼夜の別なく、献立の最初に供されることが多い。カクテルパーティーのとき、つまみとして少量が独立して供されることもある。

[小林文子]

種類

冷前菜

一品料理として用いられる代表的なものに、生カキの殻付き、キャビア、フォアグラエスカルゴ、メロンなどがある。

 盛合せ前菜(数種を盛り合わせるもの)には次のようなものがある。

(1)野菜類 トマト、セロリ、キュウリ、ビート、ラディッシュ、アスパラガスアーティチョークマッシュルーム、生シイタケなど。

(2)果物 メロン、パイナップルグレープフルーツアボカド、リンゴ、パパイヤなど。

(3)魚貝類 生で食べるムールガイ、ウニ、アカガイ、アワビ、ミルガイなどのほか、ソースで和(あ)えて用いるエビ、カニ、小魚、ワカサギ、キス、マリネにするニシン、サケ、ワカサギ、キス、ハゼと種類が多い。また、塩漬けのイクラ、キャビア、アンチョビー、缶詰のオイルサーディン、薫製のサケ、ウナギ、カキ、マスも使う。ゼリー寄せではイセエビ、クルマエビなど。

(4)肉類 ローストポークローストチキンに、加工品のハム、ベーコン、ソーセージなど。

 これらのほかにウズラ卵や鶏卵、各種のチーズやピクルスなど、盛り合わせるものは限りなくあって、変化に富んだ冷前菜ができる。

[小林文子]

温前菜

温前菜は冷前菜と異なり、軽い肉料理、揚げ物、煮物、焼き物がある。おもな温前菜を次にあげる。

(1)ブッシェbouchée パイ皮を一口大に焼いたものに、ソースで和えた鶏肉、エビ、魚などのすり身を詰めた料理。

(2)ブロシェットbrochette 肉などを串(くし)に刺して焼く料理。

(3)クロケットcroquette エビ、カニ、白身の魚、鶏肉、ジャガイモ、その他の野菜などをホワイトソースで和え、小形のコルク栓形に整えてフライにしたもの。形は好みで丸形、俵形など自由である。

(4)バルケットbarquette タルト型にパイ生地(きじ)を敷き、中にソースで和えた魚、エビ、ハムなどを入れて焼いた料理。

(5)コキーユ(コキール)coquille ホタテガイの殻に入れて焼いた料理で、コキーユとはホタテガイのこと。

(6)カナッペcanapé 長方形にかたどった食パンに、調理した材料をのせたもので、のせる材料によってその名前を料理名とする。

[小林文子]

オードブルの供し方

千利休(せんのりきゅう)のことばのように、ごく冷たいものは冷たく、温かい料理はごく温かく供することが肝要である。前菜用に特別のガラス器、木製その他変化に富んだ器ができている。一品前菜は1品のみを供する。銘々皿にレースペーパーを敷いた上にのせて勧める。とくに生ガキなどは、大皿に砕いた氷とともに盛る。盛合せ前菜の場合は3品、5品、7品というように異なった種類の料理を、仕切りのある器に盛り合わせる。ひと目でたくさんの種類のオードブルが見渡せるように、立体的に変化に富んだ盛付けをすることが望ましい。サラドヘルパー(サラダをとるスプーンとフォーク)は金属製でないものを用いるとよい。

[小林文子]

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改訂新版 世界大百科事典 「オードブル」の意味・わかりやすい解説

オードブル
hors d’œuvre[フランス]

西洋料理の前菜。原語は〈作品外〉という意味で,食欲をそそるため,主要な料理の前に出される軽い料理をいう。食事の最初に軽い料理を食べる風習はすでにギリシア時代に見られ,ローマ時代には卵,オリーブの実,カキなどとはちみつで割ったブドウ酒とで宴会が始められたという。現在のフランス料理では食事の献立に組み込まれ,あとに続く料理への期待をもたせ,食事の雰囲気を盛り上げる役割を果たすものとして重視される。また,一般には酒のさかなやつまみものもオードブルと呼ばれている。

 オードブルには冷製と温製がある。ともに材料や調理法の制限はないが,あとに出される料理との重複を避け,やや味の強いものを少なめに用いることが基本になる。冷製の場合は数種類のものを美しく取り合わせて出すことが多い。代表的なものには,キャビア,フォアグラ,生カキ,テリーヌ,カナッペ,カクテルなどがある。また,ゆで卵,魚のマリネ,あるいはハム・ソーセージ類,スモークサーモン,アンチョビー,オイルサーディンなども用いられる。温製の場合は,本格的調理をした料理を一品だけ出すのがふつうである。代表的なものとしては,エスカルゴのブルゴーニュ風やチーズのスフレなどオーブンで焼いたもの,コロッケやベーニエなどの揚物,そのほかアリュメット,ブーシェ,タルトレット,バルケット,キッシュなどのパイ料理がある。
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百科事典マイペディア 「オードブル」の意味・わかりやすい解説

オードブル

西洋料理の前菜。献立の最初に供する料理で,アペリチフのつまみとすることもある。美味・珍味のものを少量出すが,カキ,キャビア,メロンなどを1品だけ,あるいは燻製(くんせい),冷肉,生野菜などを盛り合わせたりカナッペにしたりする。またコキールや串焼(くしやき)などの温前菜もある。
→関連項目前菜ディナーテリーヌフランス料理

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和・洋・中・エスニック 世界の料理がわかる辞典 「オードブル」の解説

オードブル【hors-d'œuvre(フランス)】

西洋料理のコースで、主となる料理の前に出される軽い料理。前菜。◇直訳は「作品のほかに」となり、献立外の料理の意。「オールドゥーブル」ともいう。⇒フルコース

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オードブル」の意味・わかりやすい解説

オードブル

前菜」のページをご覧ください。

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