オルス(英語表記)Eugeni d’Ors

改訂新版 世界大百科事典 「オルス」の意味・わかりやすい解説

オルス
Eugeni d’Ors
生没年:1882-1954

バルセロナ生れの随筆家,美術評論家,哲学者。日本ではドールスと紹介されている。フランスに留学し,オルテガ・イ・ガセットとならんでヨーロッパ的知性への参加を標榜ひようぼう)する20世紀のスペインにおける知的先駆者。ゼニウスXèniusのペンネームを使用し,1906-14年にカタルニャ語で書いた時評語録Glosari》が代表作。また,プラト・デ・ラ・リバが主宰するカタルニャ地方行政院の中心的人物であり,カタルニャ研究所(1907創立)の所長を1911年から10年間務めた。しかし政治的見解相違から23年にマドリードに移り,以後スペイン語のみで著述した。内戦勃発後はフランコを支持した知識人の一人としても知られる。《プラド美術館の三時間》(1922),《バロック論》(1943)は邦訳がある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オルス」の意味・わかりやすい解説

オルス
おるす
Eugenio d'Ors
(1882―1954)

スペインの哲学者、美術評論家。オルテガ・イ・ガセー、マラニョンなどとともに、いわゆるノベセンティスモ(1912年の世代)を代表し、古典主義、貴族主義的な傾向を示す。作品には初めカタルーニャ語で書かれ、のちにカスティーリャ語で続けられた『語録』(1906~1935)や『哲学の秘密』(1947)、また『プラド美術館の三時間』(1923)、『バロック論』(1936)などの美術評論がある。

[佐々木孝 2015年11月17日]

『神吉敬三訳『バロック論』(1970/新装版・1991・美術出版社)』

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世界大百科事典(旧版)内のオルスの言及

【バロック文学】より

…文学においてバロックの概念は,20世紀,特に1910‐40年の間と60年代に,文学批評家が現代への問題意識をふまえ,16,17世紀西欧においてマニエリスムに続いて興った激情的かつ力動的な,多くの場合反古典主義的色彩を帯びた文学の傾向を,美術との関連の中でより鮮明に把握するために,美術史より導入したものである。E.オルス(ドールス),H.フォシヨンらはこの概念を,現代をも含めた他世紀の同種の傾向に適用し,また大部分の批評家がその概念の意味範囲を文体から主題,象徴へと拡大している。その理論化は多岐にわたり,共通尺度となる定義づけがないのが現状である。…

※「オルス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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