オルコメノス(英語表記)Orchomenos

改訂新版 世界大百科事典 「オルコメノス」の意味・わかりやすい解説

オルコメノス
Orchomenos

中部ギリシアのボイオティアにあるコパイス湖西岸の遺跡。中期ヘラドス時代にはすでに文化の一中心だったが,ミュケナイ時代(後期ヘラドス時代)にはここに宮殿を建てて一帯を支配する大国となった。その富強の原因は,コパイス湖を干拓して広大な耕地を得たこと,エーゲ海コリント湾の連絡路と本土の縦走路という両路をおさえる位置を占めて交易と通関税による収益が大きかったことである。宮殿の跡は発掘されたが,わずかしか判明せず,また壁画片も土器も乏しかった。しかし近くに,破壊はひどいが〈ミニュアスの墓〉と俗称される大トロスが残る。ミニュアスとは,この時代の伝説上の王の名である。しかしこの王国の強大さを示すものは,むしろコパイス湖の小島グラスの遺跡で,城壁でかためた全島約2万m2の地域の一端に両翼部から成る宮殿址が残っている。これはオルコメノスの支城と考えられている。なお,その後テーベとの対立やコパイス湖の氾濫によって衰え,前364年ボイオティア同盟により滅ぼされた。
ミュケナイ文明
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オルコメノス」の意味・わかりやすい解説

オルコメノス
おるこめのす
Orchomenos

ギリシア中部、ボイオティア北部にあった古代都市。古代ギリシアには同名の地がいくつかあるが、ボイオティアにあった町がもっとも有名である。ここでは、新石器時代、青銅器時代を通じて重要な遺跡が発見されており、後期青銅器時代(ミケーネ時代)の王宮跡、とくに大穹窿墓(きゅうりゅうぼ)(トロス)は有名で、ミケーネのそれと並ぶものである。同じボイオティアにあったテーベとは違って神話に乏しいが、ニンフの崇拝地として著名である。ホメロスによればミニアイ人の町と歌われている。歴史時代、ボイオティアで最初に貨幣をもち(前550ころ)政治的にも活躍したが、ウナギの産地として有名であったコパイス湖の氾濫(はんらん)やテーベの隆盛のため漸次衰退し、紀元前364年テーベを盟主とするボイオティア同盟により滅ぼされた。今日では、近くに同名の町があるが一寒村にすぎない。

[真下英信]

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百科事典マイペディア 「オルコメノス」の意味・わかりやすい解説

オルコメノス

中部ギリシアのボイオティア北部の古代都市。ミュケナイ時代(ミュケナイ文明),コパイス湖の干拓による農耕,海上交易で栄え,当時の遺跡として大穹窿(きゅうりゅう)墓(〈ミニュアスの墓〉),湖中のグラス島の城塞がある。前364年ボイオティア同盟に滅ぼされる。
→関連項目シュリーマン

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オルコメノス」の意味・わかりやすい解説

オルコメノス
Orchomenos

古代ギリシア,ボイオチアの古代都市。ミニアス陶器や「ミニアスの宝庫」の発掘が示すように,中・後期ヘラディック文明期 (中・後期青銅器時代) にはボイオチアの中心的な集落の一つとして繁栄したが,歴史時代に入ると覇権はテーベに移った。前4世紀には反テーベ策をとったが,前 346年テーベに破壊され,再建後はふるわなかった。他に同名の都市がアルカディアにもあった。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「オルコメノス」の解説

オルコメノス
Orchomenos

ギリシア中部のボイオティア地方のポリス。コパイス湖の北にあり,ミケーネ文明期に城砦都市として栄えた。コパイス湖の干拓はそのときに行われた。古典時代にテーベの圧力とコパイス湖の氾濫で衰えた。

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旺文社世界史事典 三訂版 「オルコメノス」の解説

オルコメノス
Orchomenos

中部ギリシアの古代都市
ミケーネ時代に交通の要衝として,ミケーネ文明の一中心として栄えたが,のち衰微した。

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世界大百科事典(旧版)内のオルコメノスの言及

【ボイオティア】より

…アッティカの北方に位置し,北東と南西でエウボイア海峡とコリントス湾とに面する。ミュケナイ時代にはオルコメノス,グラ,テーバイを中心に繁栄したが,その後は長い海岸線と良港とに恵まれて海上交易に適し,ギリシアの南北を結ぶ交通路はすべてこの地を通るという地理的条件にもかかわらず,わずかの期間を除いて,ギリシア世界で覇権を取ることはなかった。《イーリアス》の軍船表には29のボイオティアの都市が挙げられているが,古典期の独立ポリスは約12を数えた。…

※「オルコメノス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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