日本大百科全書(ニッポニカ) 「オペラ・ハウス」の意味・わかりやすい解説
オペラ・ハウス
おぺらはうす
opera house
歌劇場ともいう。オペラやオペレッタ、バレエを上演することを目的としてつくられた劇場とそれに付随した組織。最初の公開のオペラ・ハウスは1637年に開設されたベネチアのサン・カシアーノ劇場である。それ以前のオペラ上演は、宮廷や貴族の邸宅の広間や宮廷内の普通の劇場で、貴族など限定された聴衆の前で行われた。また19世紀までは宮廷がオペラ・ハウスをもつ例も多かった。
18世紀には、ヨーロッパの主要都市のほとんどに公開のオペラ・ハウスが存在し、主要な作曲家はオペラの作曲に主眼をおいた。以来ヨーロッパの音楽生活の核であるばかりでなく、社交、外交の場としても重要な役割を果たした。現在、ウィーン、ミュンヘン、ベルリン、パリ、ロンドン、ニューヨークなどには複数のオペラ・ハウスがある。今日の代表的なオペラ・ハウスは、ウィーン国立歌劇場、ミュンヘンのバイエルン国立歌劇場、ベルリン国立歌劇場、パリ・オペラ座、ロンドンのコベント・ガーデン王立歌劇場、ミラノ・スカラ座、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場などである。これらのオペラ・ハウスは、歌劇場そのもののほかに、練習場、いくつものオペラを同時期に交互に上演するための大道具の倉庫などの設備をもち、専属の管弦楽団、合唱団、バレエ団を有している。また専属の技術スタッフ、衣装や舞台美術の工房、さらにバレエ団員などの養成部門をもつ場合もある。日本では、1990年代に欧米のオペラ・ハウスと同等の舞台機構をもった劇場が相次いで建設された。また、1997年(平成9)には専属の楽団などはもたないものの、渋谷区本町の東京オペラシティ街区に新国立劇場が開館した。日本初のオペラ上演を主目的とした国立劇場である。
[美山良夫]