改訂新版 世界大百科事典 「オヒョウ」の意味・わかりやすい解説
オヒョウ
Ulmus laciniata (Trautv.) Mayr
北地の渓流沿いに生えるニレ科ニレ属の落葉高木。しばしば葉の先端が特徴的に3~5裂する。高さ25mに達し,樹皮は淡灰褐色で長く剝離する。新枝の先端が枯れ落ちる。葉は2列状に互生し,左右にややゆがんだ倒卵形で,長さ7~15cm,しばしば先端が短尾状に3~5浅裂し縁に鋭い鋸歯を生じ,両面に短い剛毛があってざらつく。4~5月,葉より早く前年の枝に紅色の花が群がって咲き,各花には5~6浅裂した鐘形の萼の内側に5~6本のおしべと花柱の2裂しためしべがある。5~6月,長さ2cmほどの楕円形の翼果を結び,翼の中央に種子がある。南千島から九州中部までと,東シベリア,カムチャツカ,サハリン,中国東北,朝鮮,中国北部の温帯,亜寒帯に分布する。群生しないが,北海道にはやや多い。材は黄褐色系の堅硬な環孔材で,器具材とくに曲木(まげき)や薪炭材などに供する。樹皮の繊維が非常に強く,アイヌは内皮を温泉や沼に漬けたのち水にさらしてぬめりを取り,糸に紡いでアツシを織った。アイヌ語ではこの木の樹皮の繊維をアツ(アハ)というがオピウという名称もあり,和名はそれからきているともいわれる。また地方によっては,縄,皮箕,鉈(なた)の鞘などを作るのに用いる。
執筆者:濱谷 稔夫
オヒョウ
Pacific halibut
Hippoglossus stenolepis
カレイ目カレイ科の海産魚で,北太平洋に広く分布し,日本では,東北・北海道沿岸の小石の多い100m以深の海底に生息する。カレイ類中最大の魚で,雄では全長1.4m,体重180kg,雌では全長2.6m,体重270kgにもなる。体は他のカレイ類より細長く,口が大きく尾びれの後縁が湾入している。体色は淡褐色で乳白色点と暗黒色の不定形斑紋が散在する。冬季に300~400mの海底で産卵する。卵径は3~4mmで他のカレイ類の1mm前後と比べてきわめて大きく,数も130万~350万粒と多い。2週間で孵化(ふか)した仔魚(しぎよ)は5ヵ月で着底し,1歳で7cm,10歳で1mを超える。寿命は25年以上である。貪食(どんしよく)で活発であり,おもにスケトウダラ,カレイ類などを食べる。一本釣り,底刺網,はえなわ,トロールで漁獲されるが量は多くない。肉は白くて脂肪が少なく美味で高価である。欧米ではフライ,日本では刺身にすることが多い。大西洋産のhalibutとは,体高が低いこと,うろこの形が違うことで区別される。
執筆者:松下 克己
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報