オパール(読み)おぱーる(英語表記)opal

翻訳|opal

精選版 日本国語大辞典 「オパール」の意味・読み・例文・類語

オパール

〘名〙 (opal opale) 数パーセントの水を含む二酸化ケイ素を成分とする鉱物。乳白色の地に赤や緑のチカチカした輝きのあるものは、ノーブルオパールといい、みがいて宝石とする。主産地はメキシコオーストラリア。一〇月の誕生石蛋白石
乳姉妹(1903)〈菊池幽芳〉前「色異(いろがは)りのオパール、さては珊瑚、真珠なんどの髪飾」

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デジタル大辞泉 「オパール」の意味・読み・例文・類語

オパール(〈フランス〉opale)

蛋白石たんぱくせき」に同じ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オパール」の意味・わかりやすい解説

オパール
おぱーる
opal

含水珪(けい)酸鉱物の一種で、含水量は普通3ないし10%であるが、まれには20%にも達することがある。たんぱく石ともいう。強制乾燥あるいは加熱することで容易に水分が失われる。また、日光に当てておくだけでも水分が徐々に失われ、表面から細かいひびが入っていく。生成時期の新しいものでは、非晶質のことがあるが、たいてい結晶度の低いクリストバル石になっていることが多い。

[松原 聰]

種類

オパール本来の色は無色ないし乳白色であるが、不純物によっても種々の色が現れる。光彩の有無および色の変化によって、何種類もの変種名がつけられているが、大きくプレシャスオパールprecious opalあるいはノーブルオパールnoble opal(貴たんぱく石)とコモンオパールcommon opal(普通たんぱく石)に分けることができる。

 プレシャスオパール(ノーブルオパール)は無色ないし乳白色半透明の基質から、虹(にじ)のような光彩が現れるもので、高価な貴石として珍重される。プレシャスオパールのうち、ブラックオパールblack opalは基質が鉄の酸化物を含むため黒くみえ、そこから緑、青、紫、金などの色が浮き出てくるものをいい、オパールのうちもっとも高価に取引される。またファイヤーオパールはおもに赤色、橙(だいだい)色などの光彩が出るもので、基質も黄色、橙色系統をしているものをいう。

 光彩が現れる原因は、微細なケイ酸の球体が規則正しく配列して格子をつくり、そのため光の回折によっておこるとされている。また球体の半径の大きさによって、現れる色が違ってくる。半径が小さいと青紫色系統が、大きいと赤色系統が強く現れる。もしこの球体が不規則に並んでいると、もはや光彩は現れず、いわゆるコモンオパールとなる。コモンオパールの場合、基質がどのような色になっていても貴石としての価値はきわめて乏しい。

[松原 聰]

産状

オパールはおもに堆積(たいせき)岩や火山岩のすきまに産する。これらは、ケイ酸分に富む熱水が循環してそこに沈殿させたと考えられる。また温泉の沈殿物としてみることもできる。ときには化石を置換していることもある。いわゆる珪化木(けいかぼく)がその例で、ウッドオパールwood opal(木化たんぱく石)と称されることもある。ほかに、流紋岩玄武岩などのすきまを埋めて産することがあるが、これは岩石固化の最終産物である。

 コモンオパールは世界中にきわめて普通に産するが、プレシャスオパールは、オーストラリアのうち、サウス・オーストラリア州のクーバー・ピディCoober Pedy、アンダムーカAndamooka、ニュー・サウス・ウェールズ州のライトニングリッジLightning Ridge、ホワイトクリフズWhite Cliffs、クイーンズランド州西南部から産するものが世界的に有名である。そのほかメキシコ、アメリカ、ハンガリーなどからも採掘されている。日本では、福島県西会津町宝坂(ほうさか)、石川県小松市赤瀬(あかせ)付近の流紋岩中などから質のよくないものを少量産するにすぎない。

 オーストラリア産プレシャスオパールの薄い板をプラスチックの上に張り付けたもの、さらにその上を水晶で覆ったものを、それぞれダブレットdoublet、トリプレットtripletとよんでいる。また母岩のついたままを研磨して装飾品としたものをボールダーboulderといっている。いずれもプレシャスオパールだけを研磨したものに比較すると価値はずっと低い。10月の誕生石。

[松原 聰]

『秋月瑞彦著『虹の結晶――オパール・ムーンストン・ヒスイの鉱物学』(1995・裳華房)』


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改訂新版 世界大百科事典 「オパール」の意味・わかりやすい解説

オパール
opal

ケイ酸SiO2を含む堆積岩,時に火成岩中に産する非晶質の鉱物で,タンパク石ともいう。成分はSiO2nH2Oで,通常1~21%の水分を含むが,宝石種となるものは水分約6~12%であるといわれる。モース硬度5.5~6.5,比重1.99~2.25,屈折率n=1.44~1.47,ガラス光沢ないし樹脂光沢である。オパール自体はごくありふれた鉱物であるが,そのなかで,美しい特有の遊色効果play of color(俗に斑色(ふいろ)という)を示すプレシアス・オパールあるいはノーブル・オパール,その地色の美しいコモン・オパールなどが主に宝石用となる。オパールはローマ時代から17世紀初期までは大いに珍重されたが,18世紀から19世紀にかけては,不幸を招く石として不評をかうことになった。その理由の一つには,ウォルター・スコットの小説《ガイアスタインのアン》(1829)の影響があるといわれている。この小説のヒロインはオパールを持っていたが,彼女がこの石をついに海に投げ捨てるまで常に不幸につきまとわれるという筋書である。しかし1964年に産地のオーストラリアにおいて,イギリスのエリザベス女王に献上された,強い青色の遊色効果を示す203カラットのホワイト・オパールは,白金枠にセットされ,ネックレスとして女王に愛用されたので,オパール愛用の風潮を再び高めたともいわれている。

 オパール特有の七彩色の遊色効果は,ケイ酸の球状粒子(150~300nmの粒子径)の規則的な配列構造に基づく内部での光の回折現象による。粒子径の大きい場合には波長の長い赤色のスペクトルを,小さい場合には波長の短い紫色のスペクトルを現すが,これらが入りまじって七彩色の効果を示す。プレシアス・オパールは,その遊色に関係なく,地色(ボディ・カラー)によって,オーストラリアで主に産する白色ないし乳白色の〈ホワイト・オパール〉,青色や灰色もしくは黒色に近い暗色の地色をもつ〈ブラック・オパール〉,そしてメキシコ産の無色の〈ウォーター・オパール〉,黄色から橙色をへて赤色までの地色をもつ〈ファイア・オパール〉の四つに大別される。生成・産状的には堆積岩中に産するサンドストーン・オパールと,火成岩中に産するマウンテン・オパールに二大別される。オーストラリア産は主として前者のタイプで,メキシコ産は後者のタイプである。遊色効果を示さなくても,地色の美しいもの(緑,ピンク,青など)は宝石の仲間に加えられ,また不透明であるが,その地色の美しいものはオパライトと呼ばれる。前記の二大産地の他に,ブラジル,インドネシア,アメリカ,ホンジュラスチェコスロバキア,タンザニア,ペルーなどに産出がある。日本でも福島県西会津町宝坂,長崎県波佐見町などに産出するが,宝石種のものはごく僅少である。オパールの構造が完全に解明された結果,1972年以降ホワイト・オパールおよびブラック・オパールが人工的に製造されるようになり,また同様な構造をもち,外観的には識別困難なほど精巧なプラスチック製模造オパールも製造されるようになった。
執筆者:

大プリニウスの《博物誌》(第37巻)には,オパールは〈いろいろな宝石の魅力を寄せあつめたようなものだから,これを記述するのはひじょうに困難である。それはいわば,ザクロ石のちらちら燃える火と,アメシストの緋色の輝きと,エメラルドの海緑色とを併せもっている〉とある。またプリニウスは一つの逸話を語っている。それによると,元老院議員のノニウスNoniusは200万セステルティウスもする巨大なオパールの指輪をもっており,アントニウスに譲ってくれと迫られたが,どうしても嫌だといって手放さず,そのために追放された。〈獣だって危険が迫ったときには自分のからだの一部を切り離すのに,追放されてまでオパールを手放さなかったノニウスの強情さは驚くべきものだ〉とプリニウスは感心している。17世紀のT.ブラウンは《壺葬論》のなかで,ウォルシンガムの野で発掘された古代の骨壺から出てきた〈まだ青い色を保っているオパール〉について愛惜をこめて語っている。火葬で燃えのこった指輪の石であろう。中世には,毒を予防する力があると信じられていたので,指輪ばかりでなく,金銀細工の装飾として用いられることも多かった。近世になって,オパールが不幸をもたらす石だという迷信が生じたのは,前述の小説の影響もあったであろうが,この石がこわれやすく,また熱によってひび割れができたりすることによるものであろう。
執筆者:

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百科事典マイペディア 「オパール」の意味・わかりやすい解説

オパール

タンパク石とも。含水コロイドケイ酸SiO2・nH2Oで水分は1〜21%。硬度5.5〜6.5。火成岩などの空隙に生じ,塊状,腎臓状,鍾乳石状,ブドウ状。ガラスまたは樹脂光沢があり,透明〜不透明。白〜無色が多いが,黄・褐・赤・青・緑・黒色などがある。内部の細かい割れ目のため干渉を起こして虹(にじ)色にきらめくものを貴タンパク石という。普通宝石のオパールとして賞用するのはこれで,メキシコ,オーストラリアに多く産する。10月の誕生石。もともとこわれやすい性質とW.スコットの小説《ガイアスタインのアン》(1829年)で不吉な石として描かれたことなどが影響し,18―19世紀には不幸を招く石との迷信が生まれたが,中世には珍重されていた。
→関連項目貴石タンパク(蛋白)色

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オパール」の意味・わかりやすい解説

オパール
opal

蛋白石ともいう。 SiO2nH2O で表わされる非晶質またはそれに近い含水ケイ酸塩鉱物。塊状,粉末。硬度 6.5,比重 2.1。ガラス光沢,ときに真珠光沢,蛋白光があり,白,黄,赤,緑色などを呈する。半透明,透明で,細かい割れ目のため内部干渉が起り,美しい虹模様のあるものは貴蛋白石と呼ばれ,宝石として珍重される。温泉の沈殿物,火山岩の空隙を満たした熱水溶液が変質してできた金属鉱物の脈石などとして産する。ローマ時代から宝石として使われた。 10月の誕生石。主産地はメキシコ (赤色系統のもの) ,オーストラリア (青色系統) 。アメリカ,ハンガリー,ホンジュラス,グアテマラにも産出し,日本にも白オパールの鉱床がある。

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化学辞典 第2版 「オパール」の解説

オパール
オパール
opal

SiO2nH2O.たんぱく石(蛋白石)ともいう.非晶質のものと,やや結晶質のものとがある.含水ケイ酸塩鉱物で硬度5.5~6.5.密度2~2.2 g cm-3n約1.6.透明ないし半透明で,色は無色,白色および淡~濃色の黄,赤,緑,青,褐色など.温泉の沈殿物として,また火山岩の空げきを満たしたり,金属鉱床の脈石として産出する.美しいたんぱく光を発するものは準宝石として珍重される.主産地はメキシコおよびオーストラリア.

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デジタル大辞泉プラス 「オパール」の解説

オパール

株式会社三香堂が販売する基礎化粧品、メイクアップ化粧品、ヘアケア用品のブランド名。

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世界大百科事典(旧版)内のオパールの言及

【クリストバライト】より

…主に安山岩,流紋岩,粗面岩,黒曜岩などの火山岩中に産出する。以前は非晶質とされていたオパールは非常に細粒なクリストバライトの集合体。天然の高温型クリストバライトは常に低温型クリストバライトあるいは低温型石英に変わっている。…

【二酸化ケイ素(二酸化珪素)】より

…また天然にはSiO2nH2Oの組成をもつ無定形の二酸化ケイ素がある。オパールはその一つで,密度は2.1~2.3g/cm3,融点は1600℃以上である。 実験室で可溶性のケイ酸塩水溶液に適当な酸を加えたコロイド状ケイ酸を蒸発乾固させると,しばしばシリカゲルと呼ばれる多孔質の無定形二酸化ケイ素が得られる。…

※「オパール」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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