オドリコソウ(読み)おどりこそう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オドリコソウ」の意味・わかりやすい解説

オドリコソウ
おどりこそう / 踊子草
[学] Lamium album L. var. barbatum (Sieb. et Zucc.) Fr. et Sav.

シソ科(APG分類:シソ科)の多年草。茎は方形で直立し高さ30~60センチメートル、基部から細い走出枝を出す。葉は対生し、広卵形で長さ5~10センチメートル、粗い鋸歯(きょし)があって先は長くとがり、基部は円心形。4月(山地では6月)ごろ葉腋(ようえき)に白色または淡紅色を帯びた花をつける。萼(がく)は5裂し、裂片は針状。花冠の筒部は上向き、基部はくびれ、内側には輪状に毛がある。上唇は冑(かぶと)形で縁に毛があり、下唇は前に突き出して広がり、小さい刺(とげ)状の側裂片がある。和名は、この花の姿を、笠(かさ)をかぶった踊り子に見立てたもの。これは春の草で、初夏には地上部が枯れてくる。俳諧(はいかい)で夏の季語としているのはふさわしくない。山野道端ややぶ陰に群生し、北海道から九州、朝鮮、中国、樺太(からふと)(サハリン)に分布する。オドリコソウ属は世界に24種あり、ユーラシア、アフリカに分布する。同属にホトケノザが、また帰化植物としてヒメオドリコソウL. purpureum L.がある。

村田 源 2021年8月20日]

 深山に生えるマネキグサLoxocalyx ambiguus (Makino) Makinoは全体の姿がオドリコソウに似ており、かつてはオドリコソウ属とされていたが現在はマネキグサ属とされている。

[編集部 2021年8月20日]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「オドリコソウ」の意味・わかりやすい解説

オドリコソウ
Lamium albumL.var.barbatum(Sieb.et Zucc.)Fr.et Sav.

山野のやぶ陰や林下に群生するシソ科の多年草。和名は踊子草の意味で,花の姿を笠をきて踊る踊子の姿に見立てたもの。茎は四角形で高さ30~50cm,地下茎を伸ばしてふえるので多くは群生する。葉は対生し,卵状心形であらい鋸歯があり,1~5cmの葉柄がある。4~6月頃,葉のつけ根に数個ずつ,白または淡紅色を帯びた花をつける。萼は5裂して裂片の先は針状にとがる。花冠は3~3.5cm,立ちあがって先は大きく2唇に分かれ,上唇はフード状になってふちにあらい毛がある。サハリン,日本,中国に分布。若芽をゆがいて食用にし,また花や全草を吐血,かっ血,月経不順などの民間薬として使う。ヒメオドリコソウL.purpureum L.はヨーロッパ原産の帰化植物で,日本では道端に多く見られる。オドリコソウ属Lamiumは世界に約40種あり,ユーラシア大陸とアフリカに分布する。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「オドリコソウ」の意味・わかりやすい解説

オドリコソウ

北海道〜九州,東アジアの林下にはえるシソ科の多年草。茎は方形で,高さ30〜60cm,節にあらい毛がある。葉は対生し,卵形で先がとがり,葉面にしわがある。4〜6月,葉腋に白〜淡紫色で長さ3〜3.5cmの唇形(しんけい)花を開く。近縁のヒメオドリコソウは一〜二年生の帰化植物で,ヨーロッパ原産。高さ10〜25cm,都市付近に多い。葉は小型で暗紫色を帯び,茎の上部では集まってつく。花は小型で,紅紫色。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android