日本大百科全書(ニッポニカ) 「オケラ(キク科)」の意味・わかりやすい解説
オケラ(キク科)
おけら
[学] Atractylodes ovata (Thunb.) DC.
Atractylodes japonica Koidz. ex Kitam.
キク科(APG分類:キク科)の雌雄異株の多年草。茎は硬く直立し、高さ0.3~1メートル。根茎はやや肥厚し長く、節がある。葉は皮質でやや硬く、普通は柄があって互生する。9~10月、茎上部に数個の花をつける。花は多数の小花とそれを取り巻く緑色の総包とからなる頭花で、針状に羽裂する魚骨状の包葉に包まれる。日当りのよい乾いた山野に生え、本州、四国、九州から朝鮮、中国東北部に分布する。根茎を乾かしたものは薬用となり、若芽はゆでて食用とする。オケラは古名のウケラのなまったものといわれる。
[小山博滋 2022年2月18日]
薬用
漢方では太くなった根茎を和蒼朮(わのそうじゅつ)といい、芳香性健胃、利尿、解熱、鎮痛剤として胃下垂、胃アトニー、食欲不振、神経痛、リウマチなどの治療に用いるが、中国産のものよりは劣る。江戸時代には、根茎を焚蒼(たきそう)とも称し、梅雨時に火にくべて湿気払いと蚊遣(かやり)に用いた。中国中部原産のホソバオケラA. lancea DC.とシナオケラA. chinensis (DC.) Koidz.の根茎を蒼朮といい、オオバナオケラA. macrocephala Koidz.の根茎を白朮(びゃくじゅつ)という。前者の二つは利尿作用が強く、後者は強壮作用が加わるとして区別して用いるが、日本では同様な作用があるとして用いる。ホソバオケラは江戸時代に佐渡で栽培しており、それを佐渡蒼朮、古立(こだち)蒼朮と称した。
[長沢元夫 2022年2月18日]