オオバヤナギ(読み)おおばやなぎ

改訂新版 世界大百科事典 「オオバヤナギ」の意味・わかりやすい解説

オオバヤナギ (大葉柳)
Toisusu urbaniana (Seemen) Kimura

本州中部以北,北海道の温帯域のゆるやかな川にそった砂礫地(されきち)に生えるヤナギ科の落葉高木。北海道の河岸林を代表する植物の一つ。学名Toisusuアイヌ呼名からとったもので,toyは墓,susuはヤナギを意味するといわれる。幹は直立し,高さ20mに達する。樹皮は灰褐色で縦に裂ける。葉は長楕円形,長さ10~20cm,ふちには細鋸歯があり,裏面は粉白色。葉柄基部に長さ5~8mmの托葉がある。雌雄異株で花は5~6月に咲く。尾状花序は葉をつけた短枝に頂生し,下垂する。雄花おしべのみからなり,まるい苞につつまれる。雌花は1個の子房からなり,花柱は深く2裂し,柱頭はさらに2裂する。ヤナギ属に比べて柱頭が大型で花後脱落すること,花序が下垂することから別属として区別されるが,芽鱗の性質などからヤナギ属マルバヤナギとの類縁を重視する意見もある。材は軽くて軟らかいので,截板に利用し,またマッチ材などとして利用される。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オオバヤナギ」の意味・わかりやすい解説

オオバヤナギ
おおばやなぎ / 大葉柳
[学] Salix cardiophylla Trautv. et C.A.Mey.
Toisusu urbaniana Kimura

ヤナギ科(APG分類:ヤナギ科)の落葉高木。冬芽の鱗片(りんぺん)は腹側で重なる。初夏、葉の展開とともに尾状花序を下垂する。成葉はほぼ無毛で楕円(だえん)ないし楕円状披針(ひしん)形で長さ10~20センチメートル、裏面は粉白色を帯び、縁(へり)に細鋸歯(さいきょし)がある。包葉は倒卵形で縁に毛がある。雌雄異株。雄花は雄しべ5~10本、背腹の腺体(せんたい)はそれぞれ1~3個ある。雌花は有毛な子房(変種トカチヤナギでは無毛)の柄(え)の左右に各1個の腺体があり、柱頭は2深裂し、花期後に花柱上部と包葉とはともに脱落する。これらのヤマナラシ属を思わせる特徴によりオオバヤナギ属が設けられた。本種は本州中部から北海道、千島に分布し、山地平野の川岸に生える。属名のToisusuは墓用柳材の意のアイヌ語による。

[菅谷貞男 2020年7月21日]

 オオバヤナギ属をヤナギ属に含め、オオバヤナギをトカチヤナギと同種とする考え方もある。

[編集部 2020年7月21日]


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