エンリケス(英語表記)Federigo Enriques

改訂新版 世界大百科事典 「エンリケス」の意味・わかりやすい解説

エンリケス
Federigo Enriques
生没年:1871-1946

イタリアの数学者,科学哲学者。1891年ピサ大学を卒業,96年より1923年までボローニャ大学教授,23年以降ローマ大学教授を歴任。しかし38年から44年までのファシスト体制下ではみずからその地位を辞した。G.カステルヌオーボ,F.セベリらとともにいわゆるイタリア幾何学派を形成し,1893年より代数幾何学に関する論文を多数発表,代数曲線についての知識の拡大に貢献した。数学研究のかたわら,数学基礎論,科学哲学の諸問題に取り組み,数学的・科学的概念の明晰(めいせき)化に努めた。19世紀末から20世紀初頭にかけての〈科学内科学批判〉運動の一翼を担ったということができる。数学基礎論においては,形式主義やG.ペアノらの論理主義に満足せず,数学を広範な哲学的・心理学的活動の一分野ととらえた。物理学思想においては,A.アインシュタインの相対性理論の哲学的基礎のある側面を準備したと評価できる。科学概念の思考経済説をとるE.マッハやK.ピアソンの立場を基本的には受け入れるものの,とりわけ精神的過程を重要視する点でマッハ主義的科学哲学とたもとを分かつ。哲学的立場は《科学の諸問題》(1906)に現れている。第1次世界大戦後は知的興味をしだいに科学史数学教育方面に向け,その方面の数学雑誌《Periodico di matematiche》を20年間も主宰し続けた。ユークリッドの《ストイケイア》の現代イタリア語訳の刊行(1925-35)の責任を負ったのも彼である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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