エンジニアリングプラスチック(英語表記)engineering plastic

デジタル大辞泉 の解説

エンジニアリング‐プラスチック(engineering plastics)

強度耐熱性・耐摩耗性にすぐれ、機械部品・電気電子部品などに用いられるプラスチックポリカーボネートポリアミドなど。エンプラ

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改訂新版 世界大百科事典 の解説

エンジニアリングプラスチック
engineering plastic

機械部品,自動車用部品,電子・電気機器部品として,それぞれの機能を生かして使用される100℃以上の耐熱性を有する樹脂総称。エンプラと略称されることもある。代表的なものとしては,ポリアセタールポリアミドナイロン),ポリエステルPBT),ポリカーボネート,変性PPO(商品名ノリル)があり,汎用エンジニアリングプラスチック汎用エンプラ)と呼ばれる。エポキシ樹脂シリコーン樹脂のような熱硬化性樹脂,より耐熱性の高いポリアリレート,PPS,ポリイミド樹脂なども含まれる。これらの耐熱性樹脂は,特殊エンジニアリングプラスチック,スーパーエンジニアリングプラスチックとも呼ばれる。代表的な汎用エンジニアリングプラスチックの特徴はつぎのとおりである。

(1)ポリアセタール 射出成形性にすぐれ,生産性が高い。硬く,寸法安定性にすぐれ,ガラス繊維などで強化することなく使用されることが多い。リールギヤなどの重要機構部品が多い。問題点として,難燃化しにくいことがあげられる。

(2)ポリアミド 強靱で,耐薬品性にすぐれている。繊維強化,非強化の両方で使用される。自己消火性がある。機構部品が多い。問題点として,吸水性およびそれによる寸法変化の大きいことがあげられる。

(3)ポリカーボネート 耐衝撃性,透明性にすぐれ,寸法精度がよく,耐熱性も高い。コネクター,カメラの機構部品などの精密成形品が多い。多くは非強化のまま用いられる。問題点として,耐溶剤性の悪いことがあげられる。

(4)変性PPO ポリフェニレンオキシド(PPO)とポリスチレンの均一混合物であり,汎用樹脂のABSに近い物性から耐熱性樹脂の物性まで多様性がある。難燃化も容易である。通常,高分子どうしの混合は相溶性が悪く,相分離することが多いが,この場合は例外的に相溶性が高く,分子分散が可能である。比較的ABSに近い物性の樹脂が,テレビやラジオのキャビネット,複写機やコンピューターのケースなどに用いられている。

(5)PBT ポリブチレンテレフタレートの略で,テレフタル酸と1,4-ブタンジオールからのポリエステルである。熱変形温度は低いが,ほとんどの場合ガラス繊維強化で使用されるので問題はなく,むしろ200℃以上にも耐えることができる。難燃化が容易で,電気特性にすぐれており,テレビ,ラジオ用の部品などに用いられる。成形時に加水分解しやすいので十分乾燥する必要がある。
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化学辞典 第2版 の解説

エンジニアリングプラスチック
エンジニアリングプラスチック
engineering plastics

工業用材料として,100 ℃ 以上,0 ℃ 以下の温度で使用できる熱可塑性樹脂をいい,エンプラと略語でよぶことが多い.汎用プラスチックであるポリエチレンスチレンポリ(塩化ビニル)などは,100 ℃ 以上の温度になると機械的特性が失われ,工業材料として使用できない.従来の木材,金属,無機材料のような力学的性質と,耐熱性,耐久性をもち,機械部品を中心に電気部品,住宅用材などである程度の強度維持が必要な部分に使用できる高分子材料のことをエンプラといい,ポリアセタールポリアミドポリカーボネートを三大汎用エンプラとよぶ.とくに耐熱性にすぐれた材料をスパーエンジニアリングプラスチックといい,ポリ(フェニレンスルフィド)樹脂(PPS樹脂)はその一つである.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

百科事典マイペディア の解説

エンジニアリングプラスチック

それぞれの機能を生かして,機械部品,自動車用部品,電子・電気機器部品として使用される耐熱性樹脂の総称。エンプラとも。ポリアミド,ポリフェニレンオキシドとポリスチレンの均一混合による変性PPO,ポリブチレンテレフタレート(ポリエステルの一種でPBTと略される)などの汎用エンジニアリングプラスチックが代表的なもの。このほかエポキシ樹脂やより耐熱性の高いポリアリレート,ポリイミド樹脂などがある。加工性能の高さ,堅牢性,耐熱性といった面から高く評価されるが,廃棄物となった際のリサイクルの方法は確立途上であり,今後の技術進展も待たれる。
→関連項目ポリアセタールポリアミド

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

エンジニアリングプラスチック
engineering plastic

強度が大で,耐熱性,耐薬品性にすぐれており,従来は金属材料などが使用されていたところに工業材料として使用できる重合体をいう。ナイロン樹脂,ポリカーボネートアセタール樹脂などがある。

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世界大百科事典(旧版)内のエンジニアリングプラスチックの言及

【ガス化学工業】より

…メーカーには,三井東圧化学,三菱瓦斯(ガス)化学,信越化学工業,日産化学工業,日本化成,協和ガス化学工業,コープケミカル,東洋ガス化学工業などがある。ガス化学工業の主要な前記3製品のうち,まずメタノールはその大半がホルムアルデヒドになり,ホルムアルデヒドは,ユリア樹脂(尿素樹脂),メラミン樹脂(接着剤や化粧板等の原料)などや,ポリアセタール(エンジニアリングプラスチック,いわゆるエンプラ)などの原料である。アンモニアは,尿素,硫安などの窒素肥料や,ナイロン,アクリルなどの合成繊維の原料をつくるのに使われる。…

【合成樹脂】より

… しかしながら,1973年の第1次,79年の第2次オイル・ショックを通して,石油との結びつきが問題になり,また大量に使いすてられるプラスチック廃棄物の処理も問題となってきている。今後の合成樹脂の伸びる方向として,少量でも機能を生かして用いられるエンジニアリングプラスチックとか,省エネルギーのために,鉄やアルミニウムより強くて軽い強化プラスチックの一種ACM(advanced composite materialの略称。炭素繊維などで補強された先進複合材料)などが注目されている。…

【石油化学工業】より

…ユニオン・カーバイド社は低密度ポリエチレンを気相法で重合させる技術を開発し,これもコストの低下に結びついている。さらに,高機能の合成繊維やエンジニアリングプラスチック(エンプラ)と呼ばれる高機能プラスチックの開発も進み,自動車や飛行機の構造部分にもこれらの素材が使われるようになっている。【北井 義久】
[石油化学工業の公害]
 石油化学工業はその製品に応じて多様な生産工程から成り,それらによる公害を一様に扱うことはできない。…

※「エンジニアリングプラスチック」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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