エルエスコリアル(英語表記)El Escorial

改訂新版 世界大百科事典 「エルエスコリアル」の意味・わかりやすい解説

エル・エスコリアル
El Escorial

スペインの首都マドリードの北西約50kmにある王室修道院離宮。スペイン・ルネサンス建築の完成を示すもので,また反宗教改革の旗手を任じたフェリペ2世の時代の一大記念碑である。聖ラウレンティウス(サン・ロレンソ)に捧げられ,正式名称はサン・ロレンソ・デ・エル・エスコリアル修道院。1563年フェリペ2世が,ローマのサン・ピエトロ大聖堂の次席建築家をつとめたトレドJuan Bautista de Toledo(?-1567)に建設を命じ,その没後エレラJuan de Herrera(1530-97)が引きつぎ,85年に完成。ドーム(高さ95m)を頂くギリシア十字プランの教会を中央に,左右に離宮と修道院を配し,教会地下に歴代王家の霊廟を設ける。大小16の中庭をもつ左右相称のプランは,ラウレンティウスが殉教した焼網から発想されたもの。ここにみられる,装飾的要素が少なく威厳に満ちた,いわゆるエレラ様式次代の公式様式となった。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エルエスコリアル」の意味・わかりやすい解説

エルエスコリアル
El Escorial

正式名称サンロレンソデエルエスコリアル San Lorenzo de El Escorial。スペイン中部,マドリード州,マドリード県の町。首都マドリードの北西約 40km,グアダラマ山脈南西麓に位置する。別荘が立並ぶ観光避暑地。 16世紀にフェリペ2世が建設した有名なエルエスコリアル修道院があり,院内に王宮美術館図書館がある。人口 6916 (1991推計) 。

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世界大百科事典(旧版)内のエルエスコリアルの言及

【スペイン美術】より

…これは,まずゴシックの構造にルネサンス的装飾モティーフ(円形浮彫,胸像,紋章,グロテスク文様など)をはりつけたような様式,その細工が銀細工plateríaを想起させるところからプラテレスコとよばれた様式から出発した(プラテレスコ様式)。その代表作はサラマンカ大学正面入口だが,時とともに,アルカラ・デ・エナレス大学ファサードのように構造と装飾の融合が進み,画家マチューカPedro Machuca(?‐1550)がアルハンブラ宮殿内に設計したカルロス5世宮において純イタリア様式に,そしてフェリペ2世が心血を注ぎ,エレラがその理想を実現したエル・エスコリアル修道院において厳格様式に到達した(エレラ様式)。この近世スペインの一大記念碑は,離宮と修道院と教会と王家の霊廟を総合するというもので,対抗宗教改革運動の本部にふさわしい建物であった。…

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