エリアーデ(英語表記)Mircea Eliade

精選版 日本国語大辞典 「エリアーデ」の意味・読み・例文・類語

エリアーデ

(Mircea Eliade ミルチャ━) ルーマニア生まれの宗教史学者・文学者神話象徴儀礼を通じて幅広く世界の宗教思想を研究著書に「永遠回帰の神話」「シャーマニズム」など。(一九〇七‐八六

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デジタル大辞泉 「エリアーデ」の意味・読み・例文・類語

エリアーデ(Mircea Eliade)

[1907~1986]ルーマニア生まれの宗教史学者・文学者。インドに留学し、ヨーガを研究。第二次大戦後はシカゴ大学教授。神話・象徴・儀礼を通じて幅広く世界の宗教思想を研究。著「永遠回帰の神話」「シャーマニズム」など。

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改訂新版 世界大百科事典 「エリアーデ」の意味・わかりやすい解説

エリアーデ
Mircea Eliade
生没年:1907-86

ルーマニアの宗教学者,作家。陸軍将校の息子として首都ブカレストに生まれ,1925年ブカレスト大学に入学。28年,修士号をとってインドに留学。カルカッタ大学サンスクリットとインド哲学を学び,31年から2年間ヒマラヤ山中のアルモーラ,ハリドワール,リシケーシのアーシュラマ(道場)で研究した。帰国してヨーガにかんする研究で学位を取得,33年から40年までブカレスト大学で哲学を講じた。以後ルーマニア政府の文化アタシェとしてロンドンリスボン駐在し,45年にソルボンヌの高等科学研究所教授となったが,57年にシカゴ大学に招かれ神学部宗教史学科の教授に就任した。その学風は,世界の諸宗教にかんする広範な知識を駆使する比較の方法と,宗教現象の象徴的な意味を明らかにする解釈学的手法に特色がみられる。主著として《永遠回帰の神話》(1949),《シャマニズム》(1951),《ヨーガ--不死と自由》(1954)などのほか,《マイトレイ》(1933)などの小説もある。なお日本でも《エリアーデ著作集》全13巻が刊行されている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「エリアーデ」の意味・わかりやすい解説

エリアーデ
Eliade, Mircea

[生]1907.3.9. ブカレスト
[没]1986.4.22. シカゴ
ルーマニアの宗教学者,神話学者,小説家。ブカレスト大学卒業後,イタリア,インドに留学。哲学,宗教学を学ぶ。帰国後,ブカレスト大学哲学科の助教授に任命され,同時に評論家としても活躍し,幻想的小説も発表する。第2次世界大戦中に外交官として国を出たまま,パリその他各地で研究生活をおくった。 1956年シカゴ大学教授となり,宗教研究の分野で大きな影響を残した。数十冊をこえる学術書,膨大な学術論文,数十編の中・短編小説がある。主著『永遠回帰の神話』 Le Mythe de l'éternel retour (1949) ,『イメージとシンボル』 Images et symboles: essai sur le symbolisme magico-religieux (52) ,『シーャマニズム』 Shamanism (64) ,『聖と俗』 Le Sacré et le profane (65) 。小説『令嬢クリスティナ』 Domnisoara Cristina (36) ,『ムントゥリャサ通りで』 De strada Mântuleasa (67) など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エリアーデ」の意味・わかりやすい解説

エリアーデ
えりあーで
Mircea Eliade
(1907―1986)

ルーマニア出身の宗教学者、文学者。3月9日、ブカレストに生まれる。ブカレスト大学で哲学を修め、1928年から1931年までインドに留学、文献と実践の両面よりヨーガを研究して博士号を得た。ブカレスト大学で教えるかたわら小説、評論に健筆を振るい、ルーマニア文壇で活躍した。第二次世界大戦中、大使館付文化担当官としてロンドン、リスボンに駐在、戦後、パリ大学、ローマ大学などで宗教学を講義、その後アメリカのシカゴ大学に迎えられる。著作は数多く、欧米宗教学界に強い影響を及ぼしている。その基調をなすのは地球社会の出現に対応する新しいヒューマニズムで、歴史、文化の差異を超えた人類の共通基盤を神話、象徴、儀礼などの研究によって立証している。文学作品には幻想的、神秘的小説が多い。

[中村恭子 2016年10月19日]

『『エリアーデ著作集』全13巻(1971~1977・せりか書房)』『エリアーデ著、堀一郎訳『シャーマニズム』(1974・冬樹社/上下・ちくま学芸文庫)』

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百科事典マイペディア 「エリアーデ」の意味・わかりやすい解説

エリアーデ

ルーマニア生れの宗教学者。ブカレスト大学卒。インドでサンスクリット,インド哲学,ヨーガを研究。ブカレスト大学を経て,1945年パリ高等研究院教授,1957年シカゴ大学教授。宗教現象学,比較宗教学の第一人者で,著書には《永遠回帰の神話》(1949年),《シャマニズム》(1951年),《ヨーガ》(1954年)のほか,《マイトレイ》(1933年)などルーマニア語小説作品もある。
→関連項目永劫回帰エクスタシーエラノス会議神話学

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世界大百科事典(旧版)内のエリアーデの言及

【永劫回帰】より

…やがて彼は《ツァラトゥストラ》において,この思想を体現する超人への転生の物語を書くことになるが,こうした思想全体の背後には,理性への不信,歴史への倦怠という世紀末の時代精神が認められる。なおエリアーデも《永遠回帰の神話》(1949)などで,伝承文化における祖型への回帰(祭祀における祖先や神々の偉業の再現)や,暦年的時間の周期(聖なるものとの交わりによる転換を告げる新年のような年中行事)における回帰の思想の意義を,近代的理性の歴史中心主義に対峙させて論じている。輪廻【三島 憲一】。…

【エクスタシー】より

…宗教の中には,神秘体験によるエクスタシーを重要視するものも多いが,とくにシャマニズムでは,中心的行為と考えられている。エリアーデは,その著《シャマニズム》(1951)で,シャマニズムとはエクスタシーの技術であり,これに必ず伴う意識の変化であるトランス状態で,巫者の魂が肉体を離れて天上界や地下界を往復すると信じられている現象であると述べている。シャマニズムのエクスタシーは,脱魂と憑依(ひようい)の2種があるが,エリアーデは狐憑(つ)きや霊などにとり憑かれる憑依を二次的な形態と考えている。…

【象徴】より

…第3に,それは実存的価値をもち,世界をあるまとまった全体として理解させる働きがある。つまり,宗教的象徴は〈直接経験の段階で明らかにしがたい実在の様式や世界の構造をあらわにする能力〉(M.エリアーデ)をもつのである。それらは象徴を通じることによってのみわれわれと交流可能になるのである。…

【通過儀礼】より

…ターナーV.Turnerの,変動期の集団に見られる無構造・無体制的状況としての〈コミュニタスcommunitas〉論は,ファン・ヘネップの通過儀礼における〈過渡〉の概念を発展させ,その無限定的属性から象徴論的に儀礼の本質に迫ろうとしたものである。また宗教学的立場からM.エリアーデは,通過儀礼を自然的存在として生まれた人間が,特定の文化のなかで,多くの儀礼を通過することによって,その文化における宗教的人間の理想に近づくプロセスとみなした。加入儀礼【綾部 恒雄】。…

【日常性】より

…(1)比較宗教学,民族学によれば,宗教の特質は〈俗〉なる日常性と対立する〈聖〉なるものの存在に求めることができる。M.エリアーデはこの二元的構造に着目して,原始宗教からキリスト教にいたるさまざまな宗教において〈聖〉なるものが具体的なシンボルや事物に現れる多様な形態hierophanyを論じた。〈聖〉なるものは,〈俗〉なるものとの弁証法的な運動をとおして,日常の生活を秩序づけ,また個体の生や死,個と共同体との関係に有意味な表象を与えるものである。…

【女神】より

…これについては,北シリアのラス・シャムラ(ウガリト)で発掘された粘土板に刻まれたバアル神話の女神アナトAnatをはじめ,エジプトのオシリス崇拝における女神イシス,ギリシアやフェニキアのビュブロスのアドニス信仰にみられる女神アフロディテなど,いずれも男神=花婿の死を嘆き悲しみ,死者の国から花婿を連れ戻すために闘う戦勝の女神として知られている。 M.エリアーデの《大地・農耕・女性》によると,古代地中海世界に広くみられるこうした女神崇拝は,古代社会における農耕儀礼に,その起源をさかのぼることができるという。古代人にとって,農耕は植物生命再生の神秘のドラマであり,決して単なる技術ではなかったというのである。…

【ルーマニア】より

…トランシルバニアでは,18世紀後半からラテン系民族としての自覚と民族文化の復興を呼びかけた言語学者・歴史家のグループが活躍し,彼らはトランシルバニア学派と呼ばれた。 19世紀の民族解放運動の時期には文学の近代化も促進されるが,その中で決定的な役割を果たしたのは,1848‐49年の革命に参加したロマン派の文学世代,言語学者・詩人のエリアーデ・ラドゥレスク,詩人アレクサンドリ,小説家ネグルッジCostache Negruzzi(1808‐68),歴史家コガルニチャーヌバルチェスクらであり,これ以後,西欧文学の影響が強まる中で,近代文学が確立されていった。ロマン派の最後の代表者で,ルーマニア詩の最高峰を築いたエミネスクは,今日まで最大の国民詩人としての地位を保っている。…

※「エリアーデ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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