エムス電報(読み)えむすでんぽう(英語表記)Emser Depesche ドイツ語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「エムス電報」の意味・わかりやすい解説

エムス電報
えむすでんぽう
Emser Depesche ドイツ語

1870年7月13日にプロイセンの枢密顧問官H・アベケンがバート・エムスからベルリンビスマルクにあてて発信した電報で、プロイセン・フランス戦争(1870~71)勃発(ぼっぱつ)の直接的原因となった。プロイセン国王ウィルヘルム1世とベルリン駐箚(ちゅうさつ)フランス公使ベネデッティとの対談、およびナポレオン3世のかねがねの要求を内容としている。ナポレオンは、ホーエンツォレルン家の者がスペイン王位継承候補者になることを辞退するように要求していたが、それが実現したのちまでも、彼は将来にわたっての確約を求め、ベネデッティ公使をプロイセン国王の保養先バート・エムスまで派遣し、確言を催促させた。ウィルヘルムは不快に思い、公使に再度会うことを拒絶した。この事情を電報で知ったビスマルクは、電文の趣旨を変えずにこれを短縮して、翌7月14日に公表した。これがフランスの世論を激高させて、プロイセンに対する宣戦布告にまで発展することとなった。

[岡部健彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android