エプーリス(英語表記)Epulis

六訂版 家庭医学大全科 「エプーリス」の解説

エプーリス
Epulis
(歯と歯肉の病気)

どんな病気か

 歯肉にみられる良性の限局性腫瘤(しゅりゅう)をエプーリスといい、歯肉腫(しにくしゅ)と呼ぶこともあります。エプーリスの大部分は炎症性および反応性の腫瘤ですが、腫瘍性のものもあります。

 炎症性エプーリスには、肉芽腫性(にくげしゅせい)エプーリス、線維性エプーリス、血管腫性エプーリス、巨細胞性エプーリス、骨形成性エプーリスなどがあります。腫瘍性エプーリスには、線維腫(せんいしゅ)性エプーリス、骨形成性エプーリスがあり、そのほかに、特殊型として先天性エプーリスなどがあります。

原因は何か

 エプーリスは歯肉、歯槽骨(しそうこつ)歯槽骨膜(しそうこつまく)歯根膜(しこんまく)などから発育してきます。誘因としては、合っていない金属冠などの機械的刺激や、歯石などの炎症性刺激、ならびに卵胞ホルモンや黄体ホルモンなどの内分泌異常が関係すると考えられています。

症状の現れ方

 一般的に歯間部歯肉に腫瘤がみられ、接触痛や出血があります。20~30代の女性に多発し、妊婦にみられる妊娠性エプーリスもあります。

 エプーリスの形は、有茎性(ゆうけいせい)、半球状、結節状、分葉状とさまざまで、表面平滑です。色調や硬さは種類によって異なり、発育はゆっくりで、腫瘤が大きくなるにつれ、歯が傾いたり、離れて開いたり、動くこともあります。

治療の方法

 歯肉や歯槽骨の一部を、骨膜とともにすべて外科的に切り取ります。原因除去のために、歯を抜くこともあります。また、妊娠性エプーリスについては、分娩後に小さくなったり、消えることもあるため、経過観察することも必要です。

伊藤 公一

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「エプーリス」の意味・わかりやすい解説

エプーリス
epulis

歯肉部に生じる良性で限局性の腫瘤状増殖物の総称。多くは炎症性,反応性の病変で,腫瘍性のものは少ない。歯肉,歯根膜,歯槽骨膜などの歯周組織に生じ,歯間乳頭部に好発する。通常有茎性で,発育は緩慢である。20~30歳代に多く,性別では女性に多く,男性の2~3倍を示す。発生の要因としては,局所的には歯石,歯の残根の鋭縁,不良補綴物などによる慢性的な刺激など,また全身的には体質や女性の内分泌異常もあげられている。病理組織学的には,肉芽腫性エプーリス,繊維性エプーリス,血管腫性エプーリス,繊維腫性エプーリス,骨形成性エプーリス,巨細胞エプーリスに分類される。このほか,妊娠時に生じる妊娠性エプーリス,また新生児にみられる先天性エプーリスがある。治療としては,歯槽骨膜を含めて,場合により歯とともに,外科的に切除する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「エプーリス」の意味・わかりやすい解説

エプーリス
えぷーりす

歯肉腫

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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